2022 Fiscal Year Annual Research Report
熱フォノン流制御型人工磁気格子の開発と超高密度磁気ホログラム三次元記録への応用
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21H01368
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
リム パンボイ 豊橋技術科学大学, グローバルネットワーク推進センター, 教授 (40502597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雄一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345953)
水戸 慎一郎 東京工業高等専門学校, 電子工学科, 准教授 (10637268)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気ホログラムメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
体積磁気ホログラムの三次元磁化分布の解明:磁気ホログラムの磁化分布を評価するために開発した走査型磁気光学(MO)顕微鏡を用いて、二光束干渉法により記録した磁気フリンジを、焦点位置の高さを変えながら観察した。その結果、まず約0.67ミクロン周期の微細な干渉縞も観察可能であり、焦点高さを変えることで観察される像が変化し、焦点位置の高さの磁化変化が最も重みづけられて観察されている可能性があることがわかった。 熱フォノン流制御光人工磁気格子の形成:熱フォノン流制御光人工磁気格子の記録層として適した希土類鉄ガーネット(Bi:RIG)の開発のため、前年度に引き続き、その特性の組成依存性について検討した。Bi:RIGの希土類サイトをDyで、鉄サイトをGaあるいはAlで置換した試料の特性を評価した結果、Dyを置換することでファラデー回転角の磁場依存性が改善し、ループの角形性が良くなることがわかったが、消衰係数が大きく透光性に課題があることも認められた。またGGGを熱拡散層とした熱フォノン流制御光人工磁気格子について、GaのBi:RIG層への拡散を抑制するための拡散抑制層の導入を検討した結果、極薄のTa2O5をGGGとBi:RIGの間に入れることが有効である可能性が見出された。 体積磁気ホログラムのシフト多重性:多重記録・再生方式の検討にあたり、まず二光束干渉法を用い、記録媒体を光の入射軸の周りに回転させるペリストロフィック多重記録した際の回折効率と干渉縞の状態を評価した。ペリストロフィック多重により角度を変えて多重記録したところ、2回多重することで回折効率は大きく低下するが、それ以上での回折効率の低下は小さく、また重ね合わせる回転角が小さいほど低下量は大きいことがわかった。多重記録した干渉縞をMO顕微鏡で観察したところ、多重記録した部分の干渉縞が大きく乱れていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三次元磁化分布の解明に関して、独自に開発した走査型磁気光学顕微鏡(MO顕微鏡)を用いた磁化分布の評価が可能であることを見出しており、今回、焦点高さが異なる像を解析することで、三次元磁化分布の解析が可能となる可能性も見出した。 熱フォノン流制御光人工磁気格子の形成に関して、体積的な磁気ホログラム形成のために必要な記録材料開発を主に進めた結果、基本的な置換効果について、定量的に明らかになりつつある。また熱フォノン流制御光人工磁気格子の形成に関しても、高い特性を維持しつつ形成可能な多層膜構造が明らかになりつつある。 多重記録・再生方式の検討に関して、MO顕微鏡を用いた多重記録した干渉縞の観察を行うことによる、干渉縞への影響が見出されつつあり、今後、磁気アシスト記録などを用いることで解決できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元磁化分布の解明に関して、引き続きMO顕微鏡による磁気ホログラムの観察と解析を進める。特に焦点高さの異なる像を解析することによる三次元磁気フリンジ形状の構築について、超解像技術など画像解析技術を適用することで実現する。更に多重記録した際の、磁気フリンジへの影響を明らかにし、超高密度記録を実現するための、磁気ホログラムの記録方式開発にフィードバックを行う。 熱フォノン流制御光人工磁気格子の形成に関して、体積記録に適した記録材料を確定するとともに、剥離などが生じにくい光熱フォノン流制御人工磁気格子の形成プロセス開発を行う。そのために非磁性ガーネットなど熱拡散層材料と反応防止層の組み合わせおよび形成温度などの作製条件の検討を行い、熱フォノン流制御光人工磁気格子に適した材料と作製プロセスの最適化を行う。 多重記録・再生方式の検討に関して、二光束干渉法により形成した干渉縞のMO顕微鏡で観察結果から、磁気アシスト記録などを適用することにより、多重記録による干渉縞への影響を小さくする手法を検討する。更にシフト多重方式では、シフトした位置に参照光を照射した際に元のホログラムからの再生条件を厳しくするように、参照光の形状や照射パターンを変えることで、クロストークの抑制を図る。その上で、作製した熱フォノン流制御光人工磁気格子に実際に多重記録を行い、光人工磁気格子の効果を検証するとともに、MO顕微鏡による観察結果も合わせて、効果的な多重記録条件を見出す。更に、従来用いてきた単層膜と熱フォノン流制御光人工磁気格子記録媒体を比較しつつ、多重記録に適した熱フォノン流制御光人工磁気格子の構造について明らかにし、超高密度磁気ホログラム三次元記録の実現を目指す。
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