2021 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物高温超伝導体の電子相図に着目した臨界電流密度制御因子の解明
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21H01377
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石田 茂之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90738064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永崎 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 首席研究員 (20242018)
辻本 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20725890)
西尾 太一郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (40370449)
柏木 隆成 筑波大学, 数理物質系, 講師 (40381644)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 臨界電流密度 / 銅酸化物高温超伝導体 / ドープ量依存性 / 磁束ピン止め / 超伝導臨界温度 / 電子相図 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅酸化物高温超伝導体Bi2.1Sr1.9CaCu2O8+δの単結晶試料をフローティング・ゾーン法で作製した。各試料のキャリアドープ量を制御するため、酸化/還元雰囲気でアニール処理を施した。超伝導臨界温度Tcと臨界電流密度Jcを磁化測定により評価した。当初、複数用意した試料を異なる条件でアニールし、そのJcを比較したところ、試料ごとにJcの値が大きくばらつき、Jcのドープ量依存性の抽出が困難であった。異なる試料では欠陥構造や化学組成比に若干の違いがあり、Jcに大きく影響したと考えらえる。 そこで本研究では、より正確なJcのドープ量依存性の評価の試みとして、同一の試料に対して繰り返しアニールを施して磁化測定を行った。この方法により、Jcの値のばらつきは大きく改善し、Jcのドープ量依存性の信頼性がより向上した。これまでにもJcが過剰ドープ領域で増大することは知られていたが、本研究では不足ドープ領域においてもJcが増大し、2つのピークを示すことを初めて発見した。このように不足ドープ領域でJcが増大することは、超伝導と他の秩序相が共存・競合することによる新奇な磁束ピン止め機構の寄与、あるいは不足ドープ領域における超伝導パラメータの急激な変化を示唆している。いずれの場合も、これまで知られていなかった新奇なメカニズムであり、より詳細な物性評価・解析が必要である。 また、輸送特性測定にも着手し、ドープ量依存性の評価を試みたが、Jcほどではないものの、試料ごとのデータのばらつきが大きい結果であった。Jcと同様に、同一試料に対してドープ量依存性の評価を行う必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅酸化物高温超伝導体のJcのドープ量依存性の評価における課題であったデータの大きなばらつきを抑えることに成功したため。またその結果、従来知られていなかった銅酸化物高温超伝導体のJcの複雑なドープ量依存性が明らかになってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は典型組成のBi2.1Sr1.9CaCu2O8+δについて評価を実施した。今後は、化学組成比を制御した単結晶試料(Bi2+xSr2-xCaCu2O8+δ等)を作製し、Jcの評価を行い、Jcの大きさ、またJcのドープ量依存性に見られた2ピークの振る舞いが化学組成によってどのような影響を受けるかを調べる。また磁化測定、輸送特性測定等により、Jc以外の超伝導パラメータ(磁場侵入長やコヒーレンス長)を評価し、Jcとの相関を明らかにする。
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