2021 Fiscal Year Annual Research Report
Total decomposition of phenol by chlorination
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21H01463
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越後 信哉 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (70359777)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 消毒副生成物 / 分画 / 反応論 / ハロ酢酸 / 溶存有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェノールと塩素の反応生成物について,逆相クロマトグラフィーによる分離と検出を試みた。フェノール濃度は3 mg C/L,塩素はフェノールに対してモル比で1:4とし2,4,6-トリクロロフェノールの生成後開裂反応等を経て中間体が存在する状況を意図した。なおpHは7にリン酸緩衝液で調整,反応時間は約24時間とした。UV検出器では複数のピークがクロマトグラム上に認められ,反応生成物の分離が適切に行われていることが確認できた。一方,荷電粒子検出器ではシグナルが得られなかった。この問題を解決するために,標準品の存在しない物質の濃度の推定が困難であるが,比較的揮発性の低い物質については,窒素吹付けで移動相を除去しTOCにより定量することとした。 ついで中間体を分離しそのハロ酢酸生成能を評価するために,高濃度条件で塩素処理を行い逆相クロマトグラフィーにより,分画を行った。分画前の反応のフェノールの初期濃度は100 mg/L,塩素注入率はモル比で1:5とした。これは,中間体の生成を意図したものである。約1日の反応後のハロ酢酸濃度は十分に低く,この試料を分画に供した。その結果,比較的後半(疎水性が高い)領域にUV検出器でピークが得られた。また,各画分を大過剰の塩素と反応させると,このピークの得られた領域(保持時間)にのみ,高いハロ酢酸濃度が得られ,このシグナルが中間体に対応するものと考えられた。 以上のことから,中間体を逆相クロマトグラフィーにより分離し,その中間体の生成能等を評価する反応条件と実験系が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェノールと塩素の反応について,中間体を逆相クロマトグラフィーにより分離し,その中間体の生成能等を評価する反応条件と実験系が確立でき,概ね順調に進展していると判断した。特に,分画後の希釈を経ても十分な感度で,生成能や中間体の評価ができる条件が決定できたことは大きな進展と言える。また,計画を少し前倒しして,検出器に関する検討を行った。荷電粒子検出器は紫外線を吸収しない反応生成物の検出と半定量を意図(注:荷電粒子検出器は標準品なしで半定量が期待できる)して用いたが,反応生成物の分子量が小さすぎるため十分に対象物質が検出器に導入されず,感度が得られないことが判明した。このため,以降の分析では,精密質量分析(Orbitrap質量分析計,イオンモビリティー-飛行時間型(TOF)質量分析計による)により,生成物の同定を行うこととした。これらの方法で,分離された生成物の組成式,マスフラグメント,異性体の分別が期待できる。なお定量には分画後試料中の有機溶媒を窒素吹き付けにより除去し, 超純水で再溶解の後TOC測定を用いることとした。以上,本研究の遂行に必要な反応条件,試料前処理条件,分析方法を概ね確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,2021年度に確立した手法で得た各塩素処理段階(つまり異なる塩素注入率)の各画分について,中間体の構造に関する情報を,LC-Q-オービトラップ質量分析計とLC-IM(イオンモビリティ)QTOF質量分析計により収集する。なお,塩素処理において時間を変えて反応を止めるのではなく,塩素注入率を変化させて試料を得る理由は,反応停止剤による中間体の還元等の変質を防ぐため,反応停止剤を加えずに塩素との反応の程度が異なる試料を得るためである。中間体の組成式(元素比)については,オービトラップを,異性体の分離には,IM-QTOFを用いる。 あわせて複数の13C標識化フェノールを用いたフェノール分子中の炭素の位置と最終生成物の対応の把握を行う。反応スキームをより明確に理解するために,フェノールの一部の炭素を13Cで標識化したフェノールを用いて,HPLCスケールで反応-分画-反応法を行いどの位置の炭素が,何を経由して最終生成物のどの炭素になるのか体系化する。市販の13C標識化フェノールとしては,1位(ipsoポジション)のみが標識化されたもの,2,6位(ortho位)のみが標識化されたもの,4位(para位)のみが標識化されたがものが可能でありこれらを利用する。それぞれを塩素化して13Cが最終生成物に現れるパタンから,フェノールの各炭素(の位置)と最終生成物の対応関係を明らかにする。
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