2022 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of deteriorated structural performance of RC members by existing crack profiles
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21H01472
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金久保 利之 筑波大学, システム情報系, 教授 (90261784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
カストロ ホワンホセ 琉球大学, 工学部, 教授 (70593391)
八十島 章 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80437574)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / ひび割れ / 構造性能 / 性能劣化 / 構成則 / 腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、部材軸方向に既存ひび割れを有するコンクリートおよび鉄筋コンクリート(RC)部材に対して圧縮実験、局所付着実験、逆対称曲げせん断繰返し加力実験を行い、RC部材の構造性能の劣化の評価のための資料、コンクリートの構成則およびコンクリートと鉄筋の付着構成則構築のためのデータを得た。 部材軸方向の既存ひび割れは、あらかじめコンクリートに埋設したパイプに破砕剤を充填(EAFP)することによって、鉄筋腐食による主筋に沿った軸方向ひび割れを発生させる方法を主体とした。また、局所付着実験、部材の加力実験では、EAFPによって生じるひび割れを模擬したプラスチック板埋設による試験体の実験も行った。 EAFPを用いた試験体によるコンクリートの圧縮実験、局所付着実験では、コンクリート表面のひび割れ幅を変動因子として実験を行い、ひび割れ幅と各強度劣化程度の関係式を得た。プラスチック板を用いた試験体による局所付着実験では、模擬ひび割れの長さや角度を取り入れた割裂線長さ比と付着強度の関係式を得た。プラスチック板埋設による部材の加力実験では、既存ひび割れにより破壊形式がせん断破壊型から付着破壊型に変化する一方で、変形の増大による耐力の低下の程度が緩慢になることが明らかとなった。 また、本研究のひび割れ模擬方法の妥当性の検討のため、鉄筋腐食によるひび割れを有するコンクリート中の付着挙動に関する系統的文献調査(Systematic Review)を行った。“Bond”、“concrete”、“corro*”をキーワードとして検索を行い、実験的研究で、かつ付着強度の評価を行った84の文献について、鉄筋質量減少率およびひび割れ幅と付着強度劣化の関係を整理した。その結果、コンクリートのひび割れ性状のみの影響に着目できる本研究の方法の妥当性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、RC造建物に生じている既存ひび割れを、ひび割れ幅および長さ、部材に対する角度、地震荷重応力に対する位置の観点から分類、整理(プロファイル化)し、既存ひび割れプロファイルを取り入れたRC部材の構造性能の劣化の評価を行うことを目的としている。現在までに、既存ひび割れの影響をコンクリート構成則および付着構成則に取り込むための実験データを得てきており、既存ひび割れの影響を考慮した構成則の構築を通して、経年劣化によるRC部材の剛性、耐力および履歴性状の評価を行っていく準備は整いつつあると考えている。 既存ひび割れを有するコンクリートの圧縮強度、鉄筋との付着強度については、ひび割れ幅や長さを取り入れた評価式を提案した。構成則の作成のために軟化挙動の違いに着目したモデルの適合性の検討を始めつつあり、Smith&YoungモデルやPopovicsモデルを用いた評価に着手した。これは本年度までの実験結果において、既存ひび割れにより強度が低下するものの逆に破壊が緩慢になり、軟化挙動が緩やかになる現象を取り込むためのもので、部材実験において、既存ひび割れによって限界変形やエネルギー吸収能が大きくなる場合があることの評価につながっていくと考えられる。 さらに、付着構成則における繰返し加力の影響、既存ひび割れと付着劣化がRC部材のテンションスティフニング効果と部材剛性に及ぼす影響を検討するための部材実験を終了しており、既存ひび割れの影響を考慮した構成則の構築が出来次第、それらを取り込んだ評価の検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、既存ひび割れが材料構成則と付着構成則に与える影響を明確にするため、ひび割れ類型に基づく模擬実験を実施する。着目するひび割れは、今年度と同様に部材軸方向のひび割れとし、EAFPやプラスチック板埋設による試験体を用いた実験を実施する。 コンクリートの圧縮挙動に関しては、元々のコンクリート圧縮強度のレベル、および既存ひび割れと対象コンクリートとの寸法の関係性が影響することが想定される。したがって、コンクリート強度と試験体寸法を変動因子とした圧縮実験を実施する。付着構成則に関しては、繰返し挙動を表現する構成則を構築するために、繰返し加力履歴を変動因子とした局所付着実験を実施する。既存ひび割れ幅の大小によって軟化挙動が変わり、加力繰返し数に応じた付着応力減少の程度が変化することが考えられるため、その挙動を付着構成則に取り込むためのデータを得る。さらに、繰返し加力の影響を考慮した付着構成則の適合性を確認するために、RC部材のテンションスティフニング効果と部材剛性に及ぼす影響を検討するための部材実験を引き続き実施する。試験体はEAFPによる既存ひび割れを有するプリズム試験体(角柱の中心に鉄筋を1本配した試験体)とし、片側繰返し一軸引張実験を行う。 また、既存建物の耐震診断資料の調査を通して得られる既存ひび割れプロファイルのデータベース化を行う。耐震診断資料には、経年指標を算定するためのひび割れ調査の結果が掲載されており、ひび割れ長さ、ひび割れ幅、ひび割れ角度などを拾い出すことができる。 以上の検討項目を取りまとめ、被災度区分判定基準における残存耐力の確認と部材剛性低下、残存変形指標の提案、およびひび割れプロファイルによる耐震診断基準の経年指標の見直しの提言につなげる検討を行う。
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Research Products
(8 results)