2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on environmental control for the conservation and exhibitions of wall paintings in cultural properties
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21H01491
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊庭 千恵美 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10462342)
高取 伸光 京都大学, 工学研究科, 助教 (70880459)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障壁画 / 文化財保存 / 実測調査 / 暴露試験 / 実験室実験 / シミュレーション / 温湿度 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は、今後公開が予定されている元離宮二条城本丸御殿であり、以下の研究成果を得た。 1)障壁画を有する戸襖の反りの発生メカニズムを定量的に評価することを目的として、実際の戸襖の物理環境把握のために、簡易な模擬戸襖を作成し、室内外の温湿度関係を確認した。次に、定量的に反り発生理由を判断するため、支持体がカーボンおよびベニヤの模擬戸襖を作成し、2室の異なる温湿度を与えた実験室実験を行い、戸襖内部の温湿度関係から戸襖の反り発生理由を考察した。 2)今後、本丸御殿の使用を検討している透明雨戸を対象に、現在、二の丸御殿で用いられている透明雨戸の周辺の温湿度環境と日射量・紫外線量について実測結果に基づき建具の内外の温湿度挙動の数値解析モデルを作成し、その再現性を確認した。また、木製雨戸を用いていた時期の御常御殿を対象に、多数室温湿度解析モデルを作成し、公開・非公開期間を含む御常御殿での温湿度を再現し解析モデルの妥当性を確認した。御常御殿の一般公開に向けた検討として、御常御殿の温湿度解析モデルを用いて、障壁画保存における適切な温湿度範囲を示し、透明雨戸を設置した場合の各公開方法における一の間の温湿度状態について解析を行い、その比較検討を行った。 3)展示環境下における障壁画ならびに障壁画に塗られた絵具の劣化・変褪色傾向とその要因を明らかにすることを目的として、支持体構造の異なる複数の模擬障壁画の暴露実験を行い、顔料ごとの変褪色傾向について検討を行った。絵具の変褪色と暴露環境の温度・湿度の関係および、模擬障壁画の支持体構成の違いと絵具の変褪色傾向の関係について考察を行った。また温度、照度が一定の実験室環境において、顔料を塗布した試験体の色の湿度依存性について検討を行い、各顔料の色の湿度依存性および色が変化するメカニズムについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施する予定の研究内容を踏まえる、本研究課題の進捗状況について以下で述べる。 本研究で明らかにすべき、A.温湿度環境と戸襖、襖等の変形に関する検討、B.日照・日射環境と壁画の変褪色の関係について、順調に研究成果が得られてきている。 また、C.建物内の温湿度環境形成の数値解析プログラムの開発と公開方法の検討についても、本研究の対象である本丸御殿の御常御殿を対象に検討が行われている。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で実施する予定の研究内容ごとに、今後の研究の推進方策を述べる。 A.温湿度環境と戸襖、襖等の変形に関する検討:昨年度までに得られた模擬戸襖を対象とした実験結果を、数値シミュレーションによる再現を行うために、①戸襖の温湿度を既存の熱水分同時移動方程式を用いて数値計算プログラムと②汎用有限要素法解析ソフト(Abaqus)による戸襖および本紙の変形解析を行う。 B.日照・日射環境と壁画の変褪色の関係:今年度も引き続き、障子越しに日照等が射入する廊下を対象に、異なる支持材や紙の貼り方を考慮した模擬襖絵を設置した曝露試験を継続し、データを得る。また、実験室実験による模擬襖絵の促進劣化試験を環境条件を変化させて行い、その挙動を明らかにする。 C.建物内の温湿度環境形成の数値解析プログラムの開発と公開方法の検討:開発されたプログラムを用いて、アクリル雨戸の日射の透過量の違い、建具の開閉に伴う換気量の違い、見学者の入室人数の違いなど公開時における室内温湿度環境と、襖の熱湿気挙動を明らかにし、Aで明らかとする材料劣化が生じにくい環境制御手法について検討を行う。 D.気流解析、照度解析の必要性の検討:CFDを用いた室内気流解析や、照度解析プログラムを用いた室内照度解析について、これまで得られてきている研究成果を元に、その検討方法について検討を行う。
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Research Products
(8 results)