2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on environmental control for the conservation and exhibitions of wall paintings in cultural properties
Project/Area Number |
21H01491
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊庭 千恵美 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10462342)
高取 伸光 京都大学, 工学研究科, 助教 (70880459)
高林 弘実 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (70443900)
貴田 啓子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (20634918)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障壁画 / 文化財保存 / 変形解析 / 顔料 / 変褪色 / 暴露試験 / 温湿度 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は、今後公開が予定されている元離宮二条城本丸御殿であり、以下の研究成果を得た。 1)障壁画の物理的劣化原因の一つである戸襖の反りに着目し、反りのメカニズムの解明および保存公開に適した戸襖の構成材料及び接合方法を明らかにするため、戸襖の変形解析を行う。既に実施済みの戸襖の反りに関する実験結果の再現を行い妥当性を確認し、戸襖を構成する部材単体や、部材のうちいくつかを組み合わせたモデルに分け、各解析結果の比較・検討を行うことで建具を構成する各部材の力学的な役割と、反りのメカニズムの関係を明らかにした。その上で、支持体の有無が反り量の変化の違いに及ぼす影響を明らかにすることで、支持体である合板やカーボンが戸襖の反りに与える影響を明らかにした。 2)展示環境下における障壁画ならびに障壁画に塗られた絵具の劣化・変褪色傾向とその要因を明らかにすることを目的として、昨年度実施した支持体構造の異なる複数の模擬障壁画の暴露実験で用いた模擬障壁画を対象に一次元の熱水分同時移動解析を行い、試験体の表裏面の温度の測定結果と解析結果を比較することでその妥当性を確認し、試験体内部および表面の水分挙動を明らかにした。またこれら結果を元に次に模擬障壁画の支持体構成の違いと絵具の変褪色傾向の関係について考察した。また温度、照度が一定の実験室環境において、顔料を塗布した試験体の色の湿度依存性について検討を行い、各顔料の色の湿度依存性および色が変化するメカニズムについて検討を行った。 3)本丸御殿の部屋ごとの障壁画の本紙と修理時に交換した本紙の下地の紙の劣化状態について調査を行った。環境条件に関する測定値及び数値シミュレーションによる障壁画の温湿度の解析結果との比較を行い、劣化状態に影響を与える要因について考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施する予定の研究内容を踏まえ本研究課題の進捗状況について以下で述べる。 本研究で明らかにすべき、A.温湿度環境と戸襖、襖等の変形に関する検討、B.日照・日射環境と壁画の変褪色の関係について、順調に研究成果が得られてきている。 また、C.建物内の温湿度環境形成の数値解析プログラムの開発と公開方法の検討についても、本研究の対象である本丸御殿の御常御殿を対象に検討が行われている。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
障壁画は、戸襖だけでなく、多くが襖に描かれている。今後、本丸御殿の一部が空調機器が導入される予定であることから、襖の接する空間のどちらかが空調される状況も想定されるため、襖に接する空間の温湿度条件の違いが襖の変形にどのように寄与するのかを実験室実験を用いて明らかにする予定である。 また、元離宮二条城本丸御殿は、建物の修理、障壁画の修復の作業が完了している。今後、建物内に障壁画を設置していくことになる。公開前の障壁画の保存環境の把握と、既に作成している建物内の温湿度環境形成の数値解析プログラムの妥当性確認を目的として、建物内の環境計測を開始する。また、これまで得られている研究成果、過去の障壁画の劣化状態と障壁画の環境条件の把握から、劣化抑制を可能とする環境管理の方法についても検討を進める。
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