2021 Fiscal Year Annual Research Report
Reshaping the housing safety-net system
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21H01504
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
祐成 保志 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (50382461)
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
川田 菜穂子 大分大学, 教育学部, 准教授 (90608267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住宅セーフティネット / 住宅政策 / 住宅市場 / 住宅確保要配慮者 / 民営借家 / 空き家 / 居住支援 / 家賃補助 |
Outline of Annual Research Achievements |
政府の住宅政策は、1990年代半ばから、市場メカニズムを利用する方向に転換した。そこでは、市場重視の住宅施策の展開に併せて、市場住宅を確保できない低所得者に対応する必要が生じた。この枠組みのなかで、2007年制定の住宅セーフティネット法にもとづき、高齢者、母子世帯、障害者などの「住宅確保要配慮者」のために、賃貸住宅のセーフティネットを構築する政策がとられた。同法2017年改正では、民営借家の空き家を活用する方針が強調された。しかし、住宅セーフティネット政策は、小規模な実績しかあげていない。住宅セーフティネット形成は、市場重視の住宅政策における低所得者対応の新たな中心手段であるにもかかわらず、その理論・実証研究はほとんど実施されず、実績の低さの原因も未解明のままである。以上の文脈をふまえ、本研究は、住宅セーフティネットの再構築のあり方を、実態分析と制度分析、さらに国際比較分析から包括的に追求しようとするものである。 この目的に沿い、本年度は、インターネット上に公開された登録住宅の情報を系統的に収集し、供給主体、入居対象、広さ、家賃、立地、築年数などのデータベースを作成・分析することで、どのような住宅が登録されたのかを把握した。その結果、登録住宅の大半は、政府がはたらきかけた不動産業界の特定企業によるもので、制度は一般家主にはまったく普及していないこと、登録住宅のほぼすべては住宅確保要配慮者を限定対象とする専用住宅ではなく、一般世帯をも対象していること、したがって、登録住宅はセーフティネットとして機能しているとはいえないこと、などを明らかにした。さらに、諸外国の住宅政策との比較を含め、日本のセーフティネット政策を説明するための理論枠組みを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セーフティネット政策における登録住宅のデータベース作成・分析から貴重な結果を得たことに加え、諸外国の住宅政策との比較から、日本の住宅セーフティネットを説明する理論枠組みの検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をふまえたうえで、次年度には、住宅セーフティネット政策のおもな対象である民営借家を対象とするアンケート調査を実施し、このセクターにおける入居層の特性を明らかにし、それによって、住宅セーフティネット政策のあり方に関する評価作業を行い、さらに、低所得者向け住宅制度の日本的特徴をとらえるために、引き続き国際比較検討を進める予定である。
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