2021 Fiscal Year Annual Research Report
主観的健康感を向上させる「ガイド付きまち歩き」のための場所の文脈情報の編集技術
Project/Area Number |
21H01512
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 春彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70170462)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガイド付きまち歩き / 主観的健康感 / 社会的健康 / 場所の文脈 / 郊外住宅地 |
Outline of Annual Research Achievements |
主観的健康感を向上させる「ガイド付きまち歩き」のため、場所の文脈情報の編集技術」の開発と社会実装を目指す本研究は、「Step1 技術開発と普遍化」「Step2 社会実装と検証」「Step3 提言」の3つのStepから成る。 初年度(2021年度)は、「Step1 技術開発と普遍化」として下記2点に取り組んだ。 まず、「(1)場所の文脈情報の抽出・編集・共有の解析」について、まちづくりオーラル・ヒストリー調査内容とその手法を整理した。その上で、歴史的市街地として越谷市旧日光街道沿いのまちづくりオーラル・ヒストリー調査を、民間企業P社および地元住民と連携し行った。合わせて、歴史的市街地と比較して場所の文脈情報が薄いと見込まれた首都圏郊外の集合住宅団地におけるまちづくりオーラル・ヒストリー調査を、民間企業J社および地域住民と連携し行った。この2つのまちづくりオーラル・ヒストリー調査より、場所の文脈情報を抽出するとともに、ヒアリング方法や調査時・編集時の地図や写真の使用といった、対象地の場所の文脈情報の疎密に合わせた情報の抽出・編集・共有手法について有効性と課題を明らかにした。 次に、「(2) ガイド付きまち歩きと主観的健康感の把握と分析」を進めた。ガイド付きまちあるきについては、先行研究より、まち歩きの頻度、行動要因、関心を持つ場所といった、まち歩き時の居住者と場所の関係を抽出する手法を整理した。加えて、健康習慣、孤独感、心の疲労感といった健康感に関する指標を整理し、主観的健康感を測る要件を把握した。これらをもとに、ガイド付きまち歩きと主観的健康感の相関を計測するデータを得るためのアンケートの設計とその分析手法を開発した。そして、本研究の対象地となる首都圏郊外1都3県居住者を対象にウェブアンケート実施し、分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は歴史的市街地として奈良県橿原市今井町地区を調査対象としていたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い長距離の出張や長期滞在が難しくなったため、歴史的市街地を埼玉県越谷市旧日光街道沿いに変更した。これにより、首都圏郊外における戸建住宅主体(P社)、団地管理主体(J社)の各研究所と連携をし、調査研究を進めることとした。 特にP社は越谷市旧日光街道沿いの宿場町において歴史的な街並みの保全活動にも取り組んでおり、地元の事業者や自治体、住民らと信頼関係を構築ししている。このことから、調査、研究をするにあたり、地元事業者や自治体、住民らから協力を得ることができ、予定通り順調に進展している。 一方、歴史的市街地と比較して場所の文脈情報が薄いと見込まれる、首都圏郊外の集合住宅団地は、多くが1960~70年代に開発されたものであり、開発から半世紀が過ぎようとしている。このような中で、いわゆる「歴史的」とは呼ばれないものの新たな文脈情報が蓄積されている可能性がある。このような文脈を活かして、ガイド付きまちあるきを実施し主観的健康感の向上に対する効果を見出すことができれば、本研究が開発する文脈情報の編集技術に一般性を高めることができると考え、調査対象に加えた。 J社はUR団地の管理を業務の中心とする企業で、首都圏でも多数の団地を扱っており、団地内の管理組合との関係も強く、住民らから協力を得られることができ、予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず「Step1 技術開発と普遍化」として、2021年度に行なった、ガイド付きまち歩きと主観的健康感に関するウェブアンケートについて、開発した手法に基づき引き続き分析を進める。具体的には、ガイド付きまちあるきの体験や関心に関して、年齢・性別などといった基本属性との関連を明らかにする、ガイド付きまちあるき等によって居住地近隣の情報を知ることや、愛着を持つことと、主観的健康感との関連を明らかにする、こうした分析成果について大まかな居住地特性の違いを明らかにする。以上の分析成果により、首都圏郊外住宅地におけるガイド付きまち歩きが主観的健康感の向上に寄与することをエビデンスを持って示す。 つぎに、「Step2 社会実装と検証」として、首都圏郊外住宅地から対象地を設定し、ガイド付きまち歩きによる介入実験を実施する。具体的にはまず、ガイド付きまち歩きの設定として、2021年度に行ったまちづくりオーラル・ヒストリー調査の成果を踏まえて、ガイド付きまちあるきのプログラムを検討する。これにあたり、地元住民や事業者の意見も取り入れながら、研究者視点にとどまらないプログラム開発を行う。この過程で、まちづくりオーラル・ヒストリー調査の成果が、ガイド付きまちあるきとして実装可能なものであったかどうかを検証する。 また、地元住民や事業者の協力を得て、実際にガイド付きまちあるきを社会実験的に実施する。そして主観的健康感の向上に寄与するか否かの検証を行う。なおガイド付きまち歩き体験者の主観的健康感の計測にあたっては、主観的健康感に関するウェブアンケートの分析結果をふまえるとともに、より短期的に効果の出る別の評価指標の開発も進める。
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