2021 Fiscal Year Annual Research Report
再帰型ニューラルネットワークを用いた操縦運動推定モデルの構築
Project/Area Number |
21H01550
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古川 芳孝 九州大学, 工学研究院, 教授 (90253492)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 篤 東京海洋大学, 学術研究院, 講師 (00242321)
茨木 洋 九州大学, 工学研究院, 助教 (20274508)
木村 元 九州大学, 工学研究院, 教授 (40302963)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 自律航行船 / 操縦運動推定モデル / 再帰型ニューラルネットワーク / 低速航行 / 航行安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
船舶の操縦運動を表すパラメータである船速,斜航角,回頭角速度の計測データに基づいて,運動方程式や各種流体力係数を必要とせずに船舶の操縦運動を推定するためのモデル構築について基礎的な検討を行った。無外乱状態における操縦運動の推定モデルの入力変数としては,船速,斜航角,回頭角速度に加えて,制御力を与える舵角とプロペラ回転数を時系列データとして取り扱うものとした。 操縦運動推定モデルの構築には,深層学習(Deep Learning)技術の一種であり,一般的な再帰型ニューラルネットワークで用いられるニューロンに代えてメモリセルと入力・忘却・出力ゲートからなるLSTM(Long Short-Term Memory)ブロックを導入することにより,過去の入力情報を記憶した上で誤差を逆伝播可能とした再帰型ニューラルネットワークを適用した。 学習に用いる教師データは操縦運動のシミュレーション計算を実施して生成した。また,教師データとして用いる船舶の操縦運動は定常旋回運動やZigzag運動等の舵角を規則的に変化させる運動とし,時系列データの長さやサンプリング間隔,学習に必要なデータセット数や学習時のバッチサイズとエポック数,さらに再帰型ニューラルネットワークの隠れ層の層数やノード数等の値の影響について検討を行った。 一方,計測データに含まれる誤差やノイズの影響の評価や除去方法に関する基礎的な知見を得ることを目的として,舵角の大きさや継続時間等をランダムに設定した操縦運動のシミュレーション計算結果に仮想のノイズを付加することにより,実船で計測された操縦運動データを模擬した教師データの生成を行った。この教師データを対象として,前述の操縦運動推定モデルの構築手法を適用することにより,実船計測データを利用する上で注意を要する事項や問題点,ハイパーパラメータの選定に及ぼす影響について検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
低速航行時の操縦運動推定モデル構築のための教師データの収集を目的として,九州大学船舶運動性能試験水槽において,模型船を用いて舵角やプロペラ回転数等を変化させた自由航走模型試験を実施する。教師データとして利用するためには,様々な船速や操舵に対する運動状態を含み,かつ長時間にわたる計測が必要となることから,水槽内における模型船の位置や進行方向,船速,回頭角速度等を計測し,進行方向前方の水槽内の航行可能範囲に応じて自動操舵する運動制御プログラムの開発を併せて実施し,効率的かつ自動的に長時間にわたる操縦運動データの計測を実現する。 続いて,自由航走模型試験より得られた教師データに対して再帰型ニューラルネットワークを適用することにより,低速航行時の操縦運動推定モデルの構築について検討を行う。自由航走模型試験によって得られたデータには計測誤差やノイズが含まれることになるため,計測誤差やノイズが操縦運動の推定精度に及ぼす影響ならびにその影響を除去する方法について検討を行う。また,操縦運動状態の違い(通常航行時と低速航行時)が時系列データの長さやサンプリング間隔,各種ハイパーパラメータの設定に及ぼす影響について評価する。 さらに,外乱として風速・風向が一定の定常風と流速・流向が一定の潮流の影響を組み込んだ操縦運動のシミュレーション計算を実施し,定常旋回運動やZigzag運動のような舵角を規則的に変化させた操縦運動と,舵角や操舵の継続時間等をランダムに設定した操縦運動の教師データを生成することにより,外乱の影響を受けた操縦運動に対する再帰型ニューラルネットワークの適用性について検討を行う。 最後に,第3年度に予定している異なる船型の模型船を対象とした通常航行時の操縦運動推定モデルの構築手法の検証に必要となる低速航行時の操縦運動データ収集を目的とした模型試験の予備試験を行う。
|