2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H01575
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
伊東 啓 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (80780692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守田 智 静岡大学, 工学部, 教授 (20296750)
山本 太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70304970)
和田 崇之 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70332450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / 薬剤耐性 / 感染症 / 進化 / ゲーム理論 / AI |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに完了していた日本(2回)・アメリカ・イギリスでの調査に加えて、スウェーデン・台湾・オーストラリア・ブラジル・ロシアでも同様のWeb調査を実施し、計41,978人から回答を得た。回答結果の分析から、各国・地域の約15~30%の回答者が「自分は抗生剤の使用を我慢したくないが、他人には我慢してほしい」という社会的ジレンマに曝されていることが分かった。また国や地域に依らず、回答者の約半数(約50%)は「自分も他人も抗生剤の使用を控える必要はない」と回答した。これは半数の回答者が、世界的な薬剤耐性問題よりも個々人の健康を尊重していることを意味しており、抗生剤の過剰使用に歯止めがかからない背景の一端が浮き彫りになった。特に性別と年齢に依る回答傾向の違いが観察され、男性よりも女性で、若年層よりも高齢層で、耐性菌問題の解決よりも個人を最優先する治療を求める傾向があった。興味深いことに、少なくとも日本では新型コロナウイルス感染症の蔓延前後で回答傾向に変化が無かった。 また、職業を医師に限定して日本国内で同様の調査を実施し、計1,055人から回答を得た。分析はまだだが、抗生剤の処方権を持つ医師は一般市民よりも薬剤耐性の問題を認知しているはずで、その医師が抗生剤を処方される側になったときにどのような回答をするかは興味深いトピックである。医師に対する調査と同時に3回目の国内調査も実施したため、今後はこれらを比較することで医師が一般市民とは異なる回答傾向を示すかどうかを確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査から各国・地域で社会的ジレンマの存在が確かめられ、成果を論文としてまとめている。これは抗生剤使用の背景にある社会的ジレンマを観測したものとしては世界初のものであり、各国・地域に依らず同様の結果が得られたことは望外の成果となった。 また、感染症の数理モデル構築でも成果が挙がっており、データと理論の両方面から順調に研究が遂行された。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチ・エージェント・シミュレーションの開発にも取り組みつつ、調査結果を論文として取りまとめる。
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