2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Engineering Estimation Model on the Critical Condition for Ignition of Flowing Premixed Flammable Mixture by Heated Surface based on Academic Investigation
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21H01576
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Research Institution | Suwa University of Science |
Principal Investigator |
今村 友彦 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 准教授 (50450664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑名 一徳 東京理科大学, 理工学研究科国際火災科学専攻, 教授 (30447429)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 着火 / 臨界条件 / 流動 / 可燃性ガス / 加熱壁面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高温熱線,ホットプレート,たばこなど一定のパワーで加熱される熱面による,流動可燃性予混合気の着火現象に注目し,その臨界条件の定量的予測を可能とする学術的モデルの構築をめざすものである。研究は大きく①着火の成否を分ける臨界の熱流束値を定量予測できるモデルの開発,②着火遅れ時間及び臨界着火温度の定量予測モデルの開発,③多様な流れ場及び加熱面形状の着火問題への拡張,の3つのサブテーマで構成している。2021年度は,上記のうち主に①について実験,理論解析,数値シミュレーションを駆使した研究を展開した。プロパン/空気予混合気およびプロパン/酸素/窒素/アルゴン予混合気の当量比を数段階設定し,0~2 m/sの低流速範囲で流動させつつ熱面に衝突させて着火の成否を見る実験を実施した。着火の臨界条件における熱流束値は濃度にはあまり依存せず流速のみに依存し,流速に伴って増加すること,アルゴン添加による影響は火炎温度の上昇には寄与するが着火の臨界条件にはほとんど影響がないことを明らかにした。この結果と,熱面周囲の着火挙動をシャドウグラフ撮影した結果とから着火モデルを立て,熱面周囲に形成される温度境界層の厚さが最大となる位置で着火するとした理論モデルを次元解析により構築した。これらの成果は2022年度中に国際誌(Fire Safety Journal)に投稿する計画である。加えて着火臨界条件の比較のために実施した,平板フランジ付き電極を用いた着火実験により消炎距離を求める実験では,流動時の消炎距離が平板内を通過する火炎伝播速度によって決まるとしたモデルを構築した。その成果は安全工学会誌に論文として受理され,同誌2022年6月号に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にのっとって2021年度は主に着火の成否を分ける臨界の熱流束値を定量予測できるモデルの構築を目指し,実験,理論解析及び数値シミュレーションを実施した。「研究実績の概要」の項でも述べた通り,実験ではプロパン/空気予混合気およびプロパン/酸素/窒素/アルゴン予混合気の当量比を数段階設定し,0~2 m/sの低流速範囲で流動させつつ熱面に衝突させて着火の成否を見るとともにその際に熱面に供給されている電気的パワーを,印加電圧及び電流の計測結果から求めた。また,熱面周囲における着火挙動をシャドウグラフ撮影した結果から,強制流の存在にかかわらず着火は主に熱面の端部から生じていることを確認した。このことから,強制流がある場合は主に熱面端部に発達する境界層内で,強制流がない場合は自然対流によって発達する境界層上端で予混合気が最も高温になることから着火地点となるとみなした定性的モデルを立てた。この知見をもとに,着火時の臨界熱流束に関係するパラメータを抽出して次元解析を行い,現象を支配する無次元数を求めて,実験結果を用いてその依存度を表すべき乗数を決定した。このようにして求めたスケール則は,着火臨界における熱流束が温度境界層厚さと熱面寸法によって予測できるとしたものであり,実験結果を良好に再現した。一方,従来着火性評価に用いられる最小着火エネルギーと,熱面着火の臨界条件との関連性を明らかにするために,比較対象として流動可燃性予混合気の最小着火エネルギーを求める実験も併せて実施した。ここでは最小着火エネルギーを消炎距離から求めることとし,まず消炎距離の流速依存性を調べた。その結果,消炎距離はスパークが生じる平板フランジ間を通過する火炎核の伝播速度に依存することを明らかにし,これが学術誌に論文として受理された。以上のように本研究はこれまでおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定にのっとり,今後の研究方針は以下のとおりである。 ①臨界熱流束値予測モデルの検討(2022年度):2021年度に構築したモデルでは,着火臨界における熱流束値が熱伝導率及び未燃気温度に比例し,熱面面積の平方根に反比例することを示している。ここで検討を要するのが,着火臨界における熱流束値が未燃気温度に比例するとしたところである。すなわち,未燃気初期温度が高いほど着火しにくくなることを表しているので,この点については直感に反する。モデルに含めたパラメータを再度検討し,予測モデルの精度を高める予定である。また,熱面着火の臨界条件との比較対象とする最小着火エネルギーについては,その測定精度を高めるために,平板フランジ付近での流れ特性と消炎距離の関係について実験及び数値シミュレーションによる検討を進める。 ②多様な流れ場及び加熱面問題への拡張(2022~23年度):2021年度は流れに対して熱面が正対し,1次元淀み流が仮定できる問題であった。これを拡張するため,熱面と流れの対向する角度を上下または左右に90°回転させた実験及び,2021年度の状態から流れ方向の熱面厚さのみを変化させた実験を実施し,その影響を含められるようモデルを拡張する。 ③着火遅れ時間及び臨界着火温度の定量的予測モデルの開発:2021年度までの研究は流れや熱面温度が定常であることを仮定したモデルである。実際には予混合気が熱面からの加熱を受けて,徐々に温度上昇する効果もあるし(比較的マクロな非定常変化),着火臨界付近での温度上昇や反応の発達など(比較的ミクロな非定常変化)も着火温度の決定には重要な情報である。これらをサーモカメラ等を駆使した実験によりデータ取得を目指すとともに,数値シミュレーションによる再現を試み,両者をあわせて定量的モデルの構築を目指す。
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Research Products
(8 results)