2021 Fiscal Year Annual Research Report
First-principles design of hydrogen energy materials from quantum modeling of electrons and nuclei
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21H01603
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
君塚 肇 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60467511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 基之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (40370407)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素吸蔵・透過 / 量子効果 / 自由エネルギー地形 / 第一原理経路積分解析 / レアイベント解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素をエネルギー媒体として利用するための材料技術を確立するには,その根本要素である「材料中における水素原子の振る舞い」を原理原則から理解し,材料設計に反映させることが重要である.本研究では申請者らが構築してきた量子論的モデリング手法を発展させることで,計算負荷を大幅に抑えながら,量子効果に由来する水素の特異な挙動を予測的に定量評価できる新規解析手法を構築する.これにより,水素エネルギー材料中の水素の反応・移動過程の自由エネルギー地形の系統的解析を実施し,水素の存在状態ならびに入出反応・移動過程のキネティクスの解明に役立てるとともに,水素透過・吸蔵性能の理論予測モデルを構築することを目指す.本年度は,以下に挙げる課題に取り組み成果を得た. (1)水素エネルギー材料に対する高精度・高効率な量子論的モデリング手法の構築 水素透過・吸蔵材料の典型系であるパラジウムを対象に,電子状態計算に基づく原子配置と系のエネルギーの対応関係をデータベース化し,これを人工ニューラルネットワークに学習させた原子間ポテンシャル(機械学習ポテンシャル)を構築した.これにより,電子状態計算の精度を維持しながら従来よりも高効率にパラジウム中の水素同位体の拡散係数を定量評価することに成功した.さらに,計算コストの高い経路積分計算を代替・補完する目的で,量子熱浴法のソフトウェア実装を進め,基礎的な系を対象に検証を行った. (2)水素エネルギー材料中の水素の反応・移動過程のキネティクスの解明 水素エネルギー材料における主要なモデル合金系の材料表面における水素分子の解離・吸着過程および材料内部への侵入・拡散過程における自由エネルギー地形を第一原理的に評価し,水素透過・吸蔵性能を律速する因子の詳細を獲得した.今年度は水素拡散特性に優れるバナジウムを対象に,水素の溶解状態と拡散機構等の量子描像を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の解析上重要となる機械学習ポテンシャルを活用した経路積分解析の枠組みを首尾よく構築することができ,その応用として,これまで不明であったPd中の3種類の水素同位体の拡散の古典・量子描像の遷移メカニズムを明らかにすることができたことから,計画通り順調に進展していると考える.また,研究を遂行するにあたり,「量子論的モデリング解析用並列計算機」(名古屋大学)を導入し,研究基盤を整備した. 水素挙動のレアイベント解析とデータ科学の活用に際して,研究分担者である志賀を含む関連分野の研究者間で研究会(2021年12月)を実施し,今後展開を進めるべき手法に関して計算分子科学の立場から議論・検討した.また,国内の関連学協会において積極的に発表・議論することで情報発信を行うとともに,触媒・エネルギー材料への機械学習利用に関する特集号(IOP Publishing)の招待論文の依頼を受けるなど,研究成果の広報活動を展開している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はこれまでに構築したモデリング手法を有機的に活用することで,実際的な課題における水素の反応・移動過程のキネティクスの評価を進めてきた.次年度はこの流れを更に発展させ,以下に挙げる課題に取り組むことを予定している. (1)今年度実装した量子熱浴法の動作検証を進めるとともに,水素エネルギー材料に対して応用することを通じてその有効性を検証する.加えて,電子状態計算に基づく原子配置と系のエネルギーの対応関係のデータベースから構築される機械学習ポテンシャルの活用を進める.これらを通じて,採用手法の精度と効率性を評価し,現行の解析手法を拡充するための適切な形態を見極める. (2)構築した手法を活用して,水素エネルギー材料における主要なモデル合金系の材料内部への水素の侵入・拡散過程における自由エネルギー地形を第一原理的に評価し,水素透過・吸蔵性能を律速する因子の詳細を獲得する.次年度は水素透過・吸蔵材料のモデル系としてB2型金属間化合物を対象とする.適宜現行の解析手法も併用し,当該系における水素の溶解状態と拡散機構等の量子描像を明らかにしていく. (3)水素エネルギー材料における水素透過特性を予測するための数理モデルを構築する.次年度は実験データが豊富に存在するPd系を題材に,水素透過・吸蔵特性を記述するためのモデル定式化と第一原理データの整備を進める.
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Research Products
(10 results)