2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ力学計測に基づくVUV光活性化高分子接合の原理解明
Project/Area Number |
21H01635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 真空紫外光 / 高分子材料 / 表面処理 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子材料表面に酸素含有雰囲気下で真空紫外 (Vacuum ultraviolet; VUV) 光を照射すると,材料表面を酸化・親水化できる.この親水化表面同士を圧着し,そのまま室温で保持あるいは母材の軟化点以下の低温で加熱することで,高分子材料を接合できる (VUV光活性化接合).本手法は接着剤フリーかつ,熱変形のない接合技術という優れた特徴を持つが,その原理・メカニズムについてはまだ未解明な点が多い.本課題では,原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscopy) を用いたナノ力学計測に基づき,本手法の原理解明を行う. 初年度は、AFMフォースカーブ計測による力学物性評価に取り組んだ。高分子材料としては、VUV光活性化接合に最も実績がある、シクロオレフィンポリマー (COP) を用いた。まず、フォトマスクを介してVUV光を照射することで、VUV光照射部/非照射部のマイクロパターンを作成した。これにより、力学物性の絶対評価ではなく相対評価とすることで、AFMカンチレバー個体差の影響を低減した。同一押し込み力に対する試料変形量を評価したところ、VUV光照射部における試料変形量は、非照射部に比べて小さいという結果が得られた。これは巨視的な接合試験から予想された結果とは一致しておらず、AFMナノ力学計測が試料最表面のみの情報を検出していることに由来する可能性がある。より定量的な弾性率評価も試みたが、COPの弾性率が高く、十分な信号/雑音比が得られず、本手法では困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AFMフォースカーブ計測により、VUV光照射部の試料変形量が、非照射部に比べて小さいという結果が得られた。これは当初の予測からは反するものであるが、言い換えればAFMを用いることで初めて明らかになった事実であるとも言える。また、AFMは押し込み深さを変えることにより、異なる深さ領域の情報を得ることができ、実際にそれに対応した結果が得られつつある。本課題ではAFMで実現可能なさまざまなナノ力学計測技術を組み合わせ、多面的に分析することを目的としており、初年度としてはまず十分な結果が得られてたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
AFMフォースカーブ計測により、試料変形量の分析に加え、凝着力の違いを検出することが可能であり、VUV光照射条件および押し込み深さにより、凝着力が変化することが実験的に分かりつつある。凝着は接合に大きく寄与する物性であることから、2022年度はまずは凝着力の分析をより詳細に行う。また、より多面的な分析を可能にするため、AM-FM bimodal AFM分析システムを導入した。現在本技術の立ち上げ中であり、立ち上げ次第、こちらも併せて複合計測を実現する。
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