2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ力学計測に基づくVUV光活性化高分子接合の原理解明
Project/Area Number |
21H01635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 真空紫外光 / 高分子材料 / 表面処理 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子材料表面に酸素含有雰囲気下で真空紫外 (Vacuum ultraviolet; VUV) 光を照射すると,真空紫外光により活性化された酸素 (原子状酸素やオゾンなど) により材料表面が酸化・親水化される.この親水化表面同士を圧着し,そのまま室温で保持あるいは母材の軟化点以下の低温で加熱することで,高分子材料を接合できる (VUV光活性化接合).本手法は接着剤フリーかつ,熱変形のない接合技術という優れた特徴を持つが,その原理・メカニズムについてはまだ未解明な点が多い.本課題では,原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscopy) を用いたナノ力学計測に基づき,本手法の原理解明を行うことを目的に、研究を進めている. 2022年度は、前年度取り組んだ弾性率計測に加え、AFMフォースカーブ計測による凝着力計測に取り組んだ。高分子材料としては、引き続きシクロオレフィンポリマー (COP) を用いた。VUV照射部と非照射部のマイクロパターンをフォトマスクを用いたマイクロ加工により形成し、同一探針による凝着力の差を評価した結果、押し込み深さが浅い場合 (~1 nm)では凝着力に差が見られず、押し込み深さを増やすにつれて (10 nm程度) 照射部において凝着力が増加することが明らかとなった。これと前年度の結果とあわせて考察すると、VUV照射された試料最表面では、一般に接合に有効であると考えられる弾性率低下・凝着力上昇が確認されず、より深い領域での凝着力上昇が接合に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
押し込み深さが浅い場合に凝着力が増加しないという結果は、試料最表面では凝着力が増加しないことを示しており、これは当初の予測とは反するものであったが、前年度の弾性計測と比較すると、妥当な結果である。すなわち、AFMナノ力学計測によって、マクロな接合試験とは全く異なる情報が得られつつあり、その点で研究としては順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の分析の結果、AFMフォースカーブ計測のみでは十分ではないことが示唆された。特に、最表面の力学物性に関する新たな知見を得るため、ダイナミックモードAFMをベースとした力学物性計測を組み合わせる。
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