2021 Fiscal Year Annual Research Report
ポーラスインサート材を用いた自発的液相浸透接合法の開発
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21H01636
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福本 信次 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60275310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松嶋 道也 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90403154)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多孔質体 / 連続孔 / 毛細管現象 / すず合金 / 銅 / 接合 / 浸透現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次世代パワー半導体ダイボンド技術として,多孔質材に対する液体の自発的浸透現象を活用した新規接合法の開発を目的としている.本年度は主に多孔質材料の作製および多孔質体に対するすず系はんだペーストの浸透現象について明らかにした. 【多孔質体の設計と作製】粉末冶金法を用いて銀および銅の多孔質体を作製した.接合のインサート材となる金属多孔質体は金属の融液や低粘度の熱硬化性樹脂が浸透する必要があるため開口型構造を有する必要がある.焼結条件(温度,時間,溶剤)を変化させることでそれぞれの材料の多孔質体の空孔率を変化させた.銀の場合,20%以上の空孔率の焼結体で連続孔を有する多孔質体が得られた.銅の場合は,銅多孔質体は空孔率13~20%で連続孔を有する多孔質体が得られた. 【多孔質体における浸透現象】粉末冶金法で作製した銀および銅の多孔質体へSn-BiソルダペーストおよびSn-Ag-Cu(SAC)ソルダペーストを溶浸させた.空孔率24%の銀多孔質体へSACペーストはその融点直上の220℃に達すると浸透が開始し,250℃/60sの保持で10mm角の多孔質体シートの隅々までSACが浸透した.浸透材の微細組織は,浸透開始直後からすず液相と銀が反応し,Ag3SnとSACの2相構造を呈した.浸透時間・温度が大きくなるに伴ってAg3Sn単相となった. 銅の場合も空孔率17%の多孔質体にSACペーストは速やかに浸透した.この場合の微細組織は,銅,Cu6Sn5およびCu3Snの3相構造を呈した. 【銅の接合】これらの銀および銅の多孔質体を銅同士の間に挿入し,SACペースト接合部の外側に位置する多孔質体に載せて加熱した.220℃以上で接合部外に設置したSACは溶融し,接合部中央まで速やかに浸透することで銅同士の接合が可能となった.本法によって30MPa以上のせん断継手強さが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに予定していた計画はほぼ順調に進展している. 【連続孔を有する多孔質体の作製】 本新規接合法の達成のためには,第1段階として連続孔を有する多孔質体の作製およびその空孔率の制御が必須であった.本年度は比較的簡便なプロセスである粉末冶金法を用いてその作製に成功した.空孔率の制御や骨格構造の最適化などの課題は残るものの,溶融すず合金が隅々まで浸透できる多孔質体の作製が可能となった. 【多孔質体への低融点金属の浸透現象】上記方法で作製した多孔質体へ毛細管現象によってすず合金が浸透することが確認された.大気中での接合を目指すため,フラックス成分を含有しているはんだペーストを用いた.銅および銀の液相すず中への溶解速度,反応速度の違いについても明らかになった.反応系のぬれ現象であるため,浸透速度についてはLucas-Washburnの式では見積もることができないことがわかり,次年度以降の課題とした. 【多孔質体をインサート材として用いた接合】多孔質体を被接合体の間に挿入し,接合界面の外側からすず合金を浸透させることで銅の接合が可能であることが示された. 微細組織形成,浸透現象および最適多孔質構造等は今後の課題であるが,初年度の目標はほぼ達成された.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は粉末冶金法によって銀および銅の多孔質体の作製およびその評価に主に取り組み,すず合金が毛細管現象で多孔質体に浸透することを明らかにした.次年度はポーラス構造の最適化,すず合金だけでなく樹脂の浸透現象を利用した接合に展開する. 【多孔質体の設計と作製】接合のインサート材となる金属多孔質体は金属の融液や低粘度の熱硬化性樹脂が浸透する必要があるため開口型構造を有する必要がある.粉末冶金法によって作製した多孔質体が液体の浸透に有効であることは明らかになったが,出発材料の粒径や焼結条件によって浸透現象が大きく影響を受けた.そこで粉末冶金法だけでなくパウダースペースホルダー法などを用い多孔質構造の最適化を行う.有限要素法による浸透シミュレーションによって液相浸透に適した微細孔径および孔分布の設計指針を得る. 【多孔質体における浸透現象の解明と接合】各種プロセスで作製した多孔質体の断面組織を走査型電子顕微鏡によって観察し,孔径,空隙率および孔分布状態を評価する.粉末冶金法によって作製した多孔質体にはすず合金が上下方向だけでなく,水平方向へも速やかに浸透するとが明らかになった.しかし,浸透は固液反応を伴い,組成分布が不均一になる場合もあることがわかった.本年度は非反応系の熱硬化性樹脂/金属多孔質体の系を用いて微細孔径と浸透速度の関係をLucas-Washburn式および液相浸透解析から見積もり,断面組織観察の結果とあわせて基礎的な浸透現象を明らかにする.またその知見を元にすず系合金/金属多孔質体の反応系液相浸透現象を調べる. 【接合】作製した多孔質体をインサート材とし,熱硬化性樹脂ならびにすず合金を浸透させることで銅同士の接合を行う.接合体は継手強度および熱伝導率によって評価する.また,接合層の断面微細組織を観察し,接合層の形成プロセスならびに相の安定性についても評価する.
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Research Products
(1 results)