2021 Fiscal Year Annual Research Report
架橋ポリマーアロイ/フィラー複合材の反応誘起型相分離とフィラー界面配列の熱力学
Project/Area Number |
21H01640
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
岸 肇 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (60347523)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 複合材料 / フィラー / エポキシ / 相構造 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、共連続相分離構造を形成する架橋ポリマーアロイ複合材中で、機能性フィラーを異種ポリマー成分が接する相分離界面近傍に自己組織的に配列させる主導原理(熱力学平衡論・速度論等)の構築を目的としている。フィラー存在場所を決定する主要因はブレンド系全体の界面自由エネルギー最小化を指向する熱力学“平衡論”と考えている。但し、線状高分子同士のポリマーブレンドとは異なり、架橋ポリマーでは相構造・フィラー分散構造形成の停止に架橋(ゲル化)が強い影響を与える。すなわち、ゲル化により相構造変化やフィラー移動が凍結されるため、熱力学的平衡状態に至る前に複合材中の相構造形態およびフィラー分散形態が決定され“速度論”的検証も不可欠と考えられる。 芳香族アミン硬化エポキシ/ブロック共重合体(BCP)/脂肪族アミン被覆in-situ銀フィラー複合材において、各相およびフィラーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)を測定し、銀フィラーのHSPと各相のHSPの距離を求めたところ、より親和性の高いBCPソフトブロック鎖に銀フィラーが選択配置されたことがわかった。この複合材では平衡論因子が支配的と言える。 一方、エポキシ/ポリエーテルスルホン/無機フィラー複合材において異なる2種の芳香族アミン硬化剤を比較しつつ、キュア温度や昇温速度を変化させた。硬化(架橋形成)後のポリマーアロイ樹脂の2相のガラス転移温度から組成分配程度を推定して各相のHSPを計算し、無機フィラーとのHSP距離により親和性を評価した。その結果、必ずしもHSP距離の近い相にフィラーが存在するとは言えないことがわかった。 上記の2つの実験結果より、ロンドン分散力、極性、水素結合性の3要素のみでは成分間相互作用を表現できない可能性が示唆される。また、平衡論因子より速度論因子が支配的となった可能性もあり、更なる検証を継続する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワークポリマーアロイをマトリックスとするフィラー系複合材料のモデル組成を構築し、平衡論要素と速度論要素の切り分けに取り組んでいる点は計画通りである。
|
Strategy for Future Research Activity |
ネットワークポリマーアロイ複合材の構造形成の途中過程を経時的に観察する手法の確立が重要と考えられる。具体的には、ゲル化前の材料を対象としたクライオミクロトーム断面作成、硬化過程に生じる相分離の各成分を染め分ける染色技術およびクライオSEMによる構造観察に取り組む。
|
Research Products
(2 results)