2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of strengthening mechanisms in nano-precipitated aluminum alloys by in-situ TEM observation and dislocation dynamics
Project/Area Number |
21H01649
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
廣澤 渉一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20345359)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TEM内その場引張試験 / 転位の種類 / 転位のすべり系 / せん断変形シミュレーション / 転位のすべり運動 / 転位の張り出し / 固溶強化 / Labuschの式 |
Outline of Annual Research Achievements |
①アルミニウム中を運動する転位の種類やすべり系の同定法を構築した。具体的には、工業用純アルミニウムA1050冷間圧延材のTEM内その場引張試験を行い、転位の張り出しの様子をその場観察して、運動転位の転位線方向tや運動方向mを評価した。また、得られた回折図形から引張方向Tや励起した反射ベクトルgを求め、対応するシュミッド因子や転位コントラストの消滅則を考慮して、バーガースベクトルbならびにすべり系の候補を選択した。その後、選択したすべり系に対して投影面上におけるbやt、mをOpenGLを用いた図形描画プログラムにより解析し、実際に観察された転位の挙動と比較することで、転位の種類(刃状転位、らせん転位、混合転位)ならびに最も妥当なすべり系を同定した。
②分子動力学(MD)法を用いた純アルミニウムのせん断変形シミュレーションより、初めに弾性変形が生じて約30MPaまで応力が増加した後に、すべり変形が開始して応力が急減し、約6MPaの定常応力で変形が継続することがわかった。この定常応力は、0Kにおいて転位がすべり運動する際に必要なパイエルス-ナバロ応力よりも大きく、MD法で避けがたい高速変形に由来する摩擦力に起因するものと考えられる。また、Al-4.0%Mg二元合金のせん断変形シミュレーションより、変形初期の弾性変形域でも、転位はMg原子に固着されて湾曲、固溶強化が生じていることが確認された。一方塑性変形が開始した後では、転位がMg原子と固着、離脱を繰り返してすべり運動し、それに伴って応力も定常応力まで増加することがわかった。Labuschの式を用いて算出した臨界せん断応力の理論値と比較すると、定常応力は理論値とよく一致し,Mg濃度の2/3乗に比例することも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験、計算とも当初の計画通りに進展している。具体的には、一軸傾斜引張試験ホルダーを用いたTEM内その場引張試験の実施方法の確立、ならびにアルミニウム中を運動する転位の種類やすべり系を同定する手法の構築が挙げられる。また計算についても、分子動力学(MD)法を用いた単結晶のせん断変形シミュレーションによって、純アルミニウムや種々のMgまたはCu濃度をもつAl-Mg, Al-Cu二元合金中での刃状転位のすべり運動、固溶溶質原子による固溶強化量などについての原子レベルの解析に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した工業用純アルミニウムのTEM内その場引張試験に続いて、Al-Mg-Cu合金やAl-Mg-Si合金などで同様の試験を行い、ナノクラスタや変調構造が生じた析出組織中の運動転位の挙動を実験的に明らかにする。その際、昨年度開発したOpenGLを用いた転位のキャラクタライゼーション法が有用であり、観察した転位の運動方向と比較することで、転位の種類やすべり系を精度よく同定できるものと期待される。 さらに、分子動力学法に基づく転位動力学モデルの構築に関しても、すでにアルミニウム母相中の刃状転位のすべり運動、ならびにMgやCu原子を固溶した合金の固溶強化量を定量評価することに成功しており、いよいよ析出物やナノクラスタを分散、運動転位と相互作用させて、強化量を評価、検証することを予定している。
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