2021 Fiscal Year Annual Research Report
「統計力学的な合金組成ゆらぎの制御」による生体用合金の新規低弾性率化手法の構築
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21H01653
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
多根 正和 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80379099)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相転移 / ゆらぎ / チタン合金 / 弾性論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、凍結された合金組成の統計的なゆらぎによって誘起されるナノスケールの特異なオメガ相変態の相転移および組織形成挙動を解明し、その上でオメガ相の形成を抑制した生体用Ti合金における新規な低弾性率化手法を構築することを目的としている。本年度は、合金組成ゆらぎを制御したTiおよびZr合金試料の作製を行い、作製した試料に対して、弾性率および内部摩擦測定を実施した。まず、凍結合金組成ゆらぎに起因する相転移現象を解明するため、統計的な合金組成ゆらぎを制御した二元系もしくは三元系のTiおよびZr合金単結晶試料の作製を行った。具体的には、アーク溶解法により、bcc安定化元素濃度の異なる二元系および三元系Ti系合金、Zr系合金の母合金を作製した。作製した母合金を使用し、光学的浮遊帯域溶融法を用いて、アルゴンガス雰囲気下で、作製した母合金組成の単結晶を育成した。育成した単結晶から、ラウエ法および放電加工機を用いてすべての面がbcc構造の{100}面で囲まれた直方体試料を切り出し、bcc相単相領域での溶体化処理を行った。研究代表者のこれまでの研究により、弾性率変化がオメガ変態の核生成の挙動に敏感な物理量であることが明らかになっている。そこで、溶体化処理後の直方体試料に対して、超音波共鳴法および電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて室温近傍の時効下で弾性率の経時変化を測定した。これにより、合金組成ゆらぎに起因したオメガ変態の核生成挙動に対する基礎的な知見を明らかにした。さらに、合金組成に応じたbcc構造の安定性と弾性特性との相関関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、bcc安定化元素濃度の異なる二元系および三元系Ti系合金、Zr系合金を作製し、それらの単結晶を光学的浮遊帯域溶融法により作製した。育成した単結晶に対して、超音波共鳴法および電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて室温近傍の時効下で弾性率の経時変化を測定することで、合金組成ゆらぎに起因したオメガ変態の核生成挙動に対する基礎的な知見を明らかにすることに成功した。さらに、合金組成に応じたbcc構造の安定性と弾性特性との相関関係を明らかにすることができたため、おおむね順調に研究を遂行することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
bcc構造の局所的な不安定性に起因した相転移(オメガ変態)挙動およびナノ組織形成挙動を解析するため、今年度に作製した合金組成ゆらぎを制御した二元系もしくは三元系のTiおよびZr合金を対象として、各種測定・解析を実施する。具体的には、X線回折等の各種分析手法を駆使して、凍結組成ゆらぎによって引き起こされるbcc構造の局所的な不安定化によってオメガ変態が生じる領域のサイズおよび温度領域を明らかにする。さらには、この研究結果と今年度に弾性率測定によって得られた解析結果との相関関係を明らかにする。
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