2021 Fiscal Year Annual Research Report
プロチウム障壁成長コントロール因子の解明で実現する高耐久集合組織制御型水素分離膜
Project/Area Number |
21H01658
|
Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (10270274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50345956)
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (40219522)
湯川 宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50293676)
小俣 香織 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 講師 (50734133)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 水素分離 / 水素透過 / 高圧ねじり加工 / 水素キャリア / 集合組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
(Ⅰ)Fe添加が再結晶化に及ぼす影響の解明とFe添加V合金膜の結晶方位制御法の確立 HPT加工した純V膜およびV-10Fe合金膜のX線回折測定を行い、(110)集合組織が得られる加工・熱処理条件を調査した。真空中において加熱しつつ、その場でX線回折測定を行った結果、純V膜では800℃以上で急激に(110)集合組織への配向が強くなった。一方、V-10Fe合金膜では温度上昇に従って次第に(110)への配向が強まるが、1000℃においても(110)以外の結晶方位がやや残留した。1000℃において1時間および24時間焼鈍したV-10Fe合金膜の組織変化を調べた。1時間熱処理することで(110)に強く配向した集合組織が得られたが、24時間まで熱処理時間が増大すると(211)方位の組織も成長する傾向を示した。すなわち、VにFeを10mol%添加してもHPT加工後に1000℃で1時間程度焼鈍することにより、(110)集合組織に配向させた水素分離合金膜を製造できることを明らかにした。
(Ⅱ)プロチウム障壁成長プロセスのその場観察と成長メカニズムの解明 V-10Fe合金膜をHPT加工後、膜表面にPd触媒を被覆し、500℃の真空中に24時間放置した。膜試料表面を光学顕微鏡観察した結果、膜表面で一様にプロチウム障壁となるPd触媒とV基材との相互拡散反応が生じた。V-10Fe合金膜はHPT加工によってナノ結晶化されており、結晶粒界密度の増大が相互拡散層の形成を加速していると理解できる。HPT加工後、1000℃の真空中で1時間焼鈍したV-10Fe合金膜でも同様の実験を行った。その結果、全面に渡って相互拡散が抑制された。すなわち、(110)集合組織に配向させることでプロチウム障壁の成長を抑制できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(Ⅰ)Fe添加が再結晶化に及ぼす影響の解明とFe添加V合金膜の結晶方位制御法の確立 Fe添加V合金膜について、HPT加工と再結晶化熱処理とを組み合わせることで、(110)集合組織を得られることを明らかにできた。また、(110)方位の配向率を高めるための熱処理条件が明らかになりつつあり、当初の計画通りおおむね順調に研究を遂行できている。
(Ⅱ)プロチウム障壁成長プロセスのその場観察と成長メカニズムの解明 Fe添加V合金膜について、HPT加工と再結晶化熱処理とを組み合わせて(110)集合組織を形成させることで、Pd触媒とV基材との相互拡散反応を抑制できることを明らかにした。また、結晶粒界密度と相互拡散反応との間に密接な関係があることも捉えることができ、当初の計画通りおおむね順調に研究を遂行できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(Ⅰ)Fe添加が再結晶化に及ぼす影響の解明とFe添加V合金膜の結晶方位制御法の確立: 昨年度の研究において、VにFeを添加することで(110)集合組織を形成しにくくなるものの、1000℃、1時間の熱処理によって(110)集合組織が増大し、水素分離耐久性が格段に向上できることを明らかにした。しかしながら実際にV-10Fe合金表面の(110)結晶組織上で、Pd触媒との相互拡散が抑えられているのかどうかについては未だ明らかにできていない。そこで、HPT加工材表面の結晶方位をEBSDで正確に把握した試料を準備し、500℃で熱処理を行い、方位毎のPd触媒との相互拡散状態を調査する。これにより、V-10Fe合金膜表面で相互拡散反応の抑制に効果的に寄与する結晶方位を明らかにする。
(Ⅱ)プロチウム障壁成長プロセスのその場観察と成長メカニズムの解明: 昨年度の研究において、Pd触媒層、Pd触媒層とV基材との界面、およびV基材そのもののどこでプロチウム障壁が形成されているのかを明確にする必要があることが明らかとなった。そこで、Pd触媒をコーティングした純V膜について、400℃において水素分離性能が低下した膜表面を研磨してPd触媒層を除去後、再度Pd触媒層をコーティングして水素分離試験を行う。これにより、V基材中にプロチウム障壁が形成されているかどうかを明らかにする。一方、400℃で水素分離性能が低下した膜試料断面を電子顕微鏡で詳細に観察し、Pd触媒層、Pd触媒層とV基材との界面、およびV基材中にどのようなプロチウム障壁が形成されているかを明らかにする。
(Ⅲ)優先方位(110)再結晶集合組織に制御されたFe添加V合金膜の水素分離耐久性能評価: HPT加工後、1000℃、1時間熱処理したV-10Fe合金膜を準備し、350℃での長時間水素分離耐久試験を開始する。
|
Research Products
(5 results)