2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the Mechanism of Surprisingly Improved Film Formation Property of Solid-State Polymer Coatings by Applying Chemical Reactions of Active Metals
Project/Area Number |
21H01664
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 和洋 東北大学, 工学研究科, 教授 (50312616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 隆治 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (00570897)
齋藤 宏輝 東北大学, 工学研究科, 助教 (20869648)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コールドスプレー / チタン / 成膜効率 / フッ素系樹脂 / 中間層中間層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては,金属基材上へのフッ素系樹脂皮膜の形成に対し,活性な金属中間層を用いることで成膜効率の飛躍的な改善とそのメカニズムに関して検討を行った.活性な金属としてチタンの中間層をコールドスプレー法と呼ばれる固相成膜技術で成膜し,その後,フッ素系樹脂を成膜した.その結果,成膜効率80%以上という驚愕的な値を得ることができた.これは,コールドスプレー法による成膜でチタン皮膜の粗さが粗くなり機械的に成膜しやすくなる効果と,活性なチタンが樹脂と化学反応を生じる化学的に成膜しやすくなる効果が考えられる.そこで,チタン板の上に同様の条件で成膜したところ,皮膜の形成には至らず,コールドスプレーで成膜したチタンが成膜効率改善に有効であることがわかった.また,チタン中間層を予め高温酸化させた後,フッ素樹脂成膜を実施したところ,酸化処理したものの方が成膜効率が高くなることを突き止めた.これは,チタンの酸化物とフッ素樹脂中の元素が化学反応を生じ,粒子が基材へ付着しやすくなったことが考えられる.さらに,コールドスプレー法で成膜したチタン中間層の粗さをスプレー条件を変えることで制御し,粗さと成膜効率の関係を評価したところ,平均粗さが15ミクロンを超えると飛躍的に成膜効率が向上することも明らかにした.この結果から,チタン中間層は化学反応による成膜性の改善のみならず,表面粗さの増加による改善の2つの効果が考えられ,その粗さには最適値があることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタン中間層による驚愕的な樹脂コーティングの成膜効率ならびに密着強度改善のメカニズムを明らかにし,汎用性の高い異種材料成膜技術の確立を目的としている.チタン中間層の利用により,成膜効率が80%以上,界面強度もTiボンドコート未使用材に比べ3倍以上に向上させることに成功している.成膜効率改善メカニズムの解明に関しても,活性な金属であるチタンがフッ素系樹脂から炭素やフッ素を取り込もうとし,化合物を生成することによる化学反応が考えられる.この点に関し,チタン以外の中間層を用いた同様の効果を検討した.この結果,銅では成膜効率改善の効果は低く,活性な金属が有効であることを示すことができた.さらに,チタン中間層を予め高温酸化させ,表面に酸化皮膜を敢えて形成させると成膜効率が改善することも明らかにした.これはチタンの酸化物がフッ素系樹脂中の元素と化学反応を起こすことが考えられ,今後の検討課題である.最終的には,他の活性金属,樹脂の組合せも検討し,マルチマテリアル化へ展開していく.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間のスパンで研究を推進しており,年度ごとに以下の課題に取り組んでいる. 初年度は【課題1】として,チタン中間層によるフッ素系樹脂皮膜の成膜性改善効果のメカニズム解明に取り組んできた.その結果,チタン中間層は,成膜時の表面粗さが他の金属よりも粗く,これによる機械的な締結と活性なチタンによる化学的な締結の双方の効果により成膜性が向上することがわかってきた. 2年度目は,【課題2】として,成膜性とコールドスプレー成膜条件の関連性を評価する.Tiボンドコートとフッ素系樹脂をゆっくりとコンタクトさせても成膜ができないことから,樹脂成膜には運動エネルギーが必要であると考えている.そこで,初年度で得られた成膜メカニズムを基に,コールドスプレー成膜条件,すなわち運動エネルギーと成膜性の関連性を評価し,さらなる成膜性の改善に着手する. 特に,成膜条件を変化させた場合の機械的な粒子の変形挙動を有限要素解析で求め,化学反応の有無に関しては分子動力学シミュレーションから求めていく.さらに,各条件における界面の密着状況の判断および化学反応の有無の判断を透過型電子顕微鏡によるナノオーダーの観察から得る.
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