2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of highly tough gel containing ionic liquid using structure controlled polymer by precision polymerization
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21H01691
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
神尾 英治 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30382237)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲル / イオン液体 / 高強度ゲル / ダブルネットワーク / CO2分離膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体含有高強度ダブルネットワークゲル(DNイオンゲル)の高強度発現に寄与する有機ネットワーク(2ndネットワーク)の影響について、精密重合により合成した架橋性高分子を用いて作製したDNイオンゲルの弾性率に関する理論的検討を実施した。DNイオンゲルの弾性率と膨潤度に関する古典的ゴム弾性理論に基づく検討から、無機ネットワーク由来の弾性率は有機ネットワークの有効架橋密度に依存することが確認された。この結果より、DNイオンゲルでは、高分子ネットワークを介してDNイオンゲル内に分散して存在する無機粒子凝集体に応力が負荷されるため、有機高分子ネットワークの有効架橋密度により無機粒子凝集体への応力負荷割合が変化し、その結果としてDNイオンゲルの弾性率が変化することが示唆された。 また、均一なネットワーク構造を有する4分岐鎖ポリエチレングリコールを2ndネットワークとして用いた複合ネットワークイオンゲルの機械的強度に関する検討から、2ndネットワーク構造の均一性は1stネットワーク構造の破壊に伴うエネルギー散逸に大きな影響を及ぼし、2ndネットワーク構造が均一なほどエネルギー散逸量が大きく、イオンゲルがより高強度化されることを示唆する知見を得た。 一方で、これまでに作製に成功した高強度イオンゲルについて、その薄膜化とCO2選択透過性能の評価についても検討を行った。その結果、高イオン液体含有率の高強度イオンゲル膜では、シリカナノ粒子を原料とする1stネットワークを有するDNイオンゲル膜と架橋性高分子ネットワークを1stネットワークとする高強度イオンゲル膜のCO2透過係数は、他の高強度イオンゲル膜よりも大きいことが示唆される結果を得た。これは、高強度イオンゲル膜の溶質拡散性やガス透過速度がゲルネットワークの設計により制御できる可能性を示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無機/有機DNイオンゲルの機械的強度に対する有機ネットワークの影響について、当初予定通り、精密重合により合成した架橋性高分子を用いて調製したDNイオンゲルの有機ネットワークの有効架橋密度がDNイオンゲルの機械的強度に及ぼす影響について、古典的ゴム弾性理論に基づく解析を行った。その結果、DNイオンゲルの弾性率は無機ネットワーク由来の弾性率と有機ネットワーク由来の弾性率の和として書きあらわすことができ、さらに、無機ネットワーク由来の弾性率が有機ネットワークの有効架橋密度に依存することを理論的に明らかにした。つまり、DNイオンゲルの有機ネットワーク(2ndネットワーク)は、DNイオンゲルの散逸エネルギーだけでなく、弾性率にも寄与していることを明らかにした。以上の結果より、DNイオンゲルの強度発現に及ぼす無機ネットワークおよび有機ネットワークの役割を明確化できた。また、その機械的強度は有機ネットワークの構造均一性増大により増大することを明らかにした。これらは当初予定の計画通りの成果である。 また、無機/有機DNイオンゲル、MOFナノ粒子/有機ネットワーク複合イオンゲル、半結晶性高分子/有機ネットワーク複合イオンゲルについて、各々イオンゲル膜を調製し、それらのCO2選択透過性能に関する検討も実施した。各々のイオンゲル膜とも、イオン液体含有率の増大に伴いCO2透過係数が指数関数的に増大することを明らかにし、創製した高強度イオンゲルはCO2分離膜材料として有望な材料であることを示した。これは当初計画では2023年度に実施予定の検討項目であり、予定を前倒しして検討を実施した結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討結果から、DNイオンゲルの有機ネットワーク(2ndネットワーク)はゲルのマクロな破壊の抑制だけでなく、1stネットワークの弾性率への寄与および内部破壊に伴うエネルギー散逸による高強度化に寄与していることが明らかとなった。また、構造均一性の高い有機ネットワークはより多くのエネルギー散逸を誘発できる可能性が示唆された。さらに、無機ナノ粒子だけでなく有機金属構造体ナノ粒子や半結晶性高分子を1stネットワークの材料とする高強度イオンゲルも作製可能であることが示された。そこで今後は、均一な構造を有する2ndネットワークの分子量がイオンゲルの機械的強度に及ぼす影響や、マルチブロックコポリマーを用いたイオンゲルの機械的強度と2ndネットワーク構造均一性に関する検討を行い、高強度イオンゲルの機械的強度とネットワーク構造に関する理解の深化を図る。また、イオンゲルの機械的強度を増大させるための2ndネットワーク設計指針を確立する。 また、ゲル内における2ndネットワークの柔軟性とガス透過速度の関係を検討する。具体的には、2ndネットワークの柔軟性を一軸延伸試験による弾性率測定、およびパルスNMRによる緩和時間測定から評価し、ガス透過性能評価試験から得られる透過速度との相関関係を詳細に検討する。以上の検討を通じて、優れた機械的強度と高速ガス透過性を併せ持つ高強度イオンゲルネットワーク設計指針を確立する。 加えて、CO2分離膜への適用に関しては、高強度イオンゲルの薄膜化についても検討を行う。これまでの検討で見出した半結晶性高分子を有する高強度イオンゲルをスピンコート法やキャスト法などで薄膜に整形し、そのCO2選択分離性能を評価する。
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Research Products
(19 results)