2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new bioseparation material aiming at both suppression of surface contamination and repair of biomolecules
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21H01692
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (10335383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モデル生体膜 / リン脂質ポリマー / タンパク質 / 修復 / 動的ナノ空間 / 脂質平面膜 / 成長相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実施計画に対応した結果を以下において個別に述べる。 (1)モデル細胞膜の作成…ポリビニルピロリドンやポリメチルメアクリレートなどにより高分子支持膜を作成した。また、リン脂質と糖鎖脂質の混合脂質系を作成した。(2)リン脂質ポリマーの準備…高分子鎖長をn = 10~100まで変化させたものを準備した。(3)上記膜材料の物性評価…蛍光プローブの運動性の高さを偏向解消法で定量化し、極性環境の評価も行った。二重染色法により、混合脂質膜系の相分離性などを観察できるようになった。(4)動的ナノ空間分布の評価…原子間力顕微鏡を用いて膜内部に存在する動的構造を可視化した。さらに膜弾性係数を評価し、水和構造が強固なほど弾性が弱くなることが示唆された。(5)リン脂質ポリマー膜表面へのタンパク質吸着過程の検討…原子間力顕微鏡を用いて膜材料表面の付着力測定を行い、タンパク質の表面物性を用いて付着力を補正して吸着量を推定する補正関数を決定できた。(6)タンパク質の成長相モニタリング…まず蛍光標識タンパク質を作成した。膜界面でのアミロイドβ(Aβ)と高分子の絡み合いによる空間的制限がAβの並進拡散を抑制し、結果としてアミロイド核形成に影響を与えることが示された。
さらに、(3)と(6)を踏まえると、タンパク質が平面膜上の特定の領域に集中して吸着されやすいことが判明した。この現象が各成長相の成長ダイナミクスに関連していることが示唆された。さらに、(1)と(6)より、膜上の並進拡散特性について、分子量と構造状態の双方に依存性があることが見いだされた。それゆえ、成長相の選択は界面上での並進拡散過程に関連するという予想は外れていないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はCOVID-19の影響により、全反射蛍光顕微鏡に蛍光共鳴エネルギー移動を同時観察するシステムを増設する工事が大幅に遅れた。そのため、計画の一部を前後させることで研究の進展に影響がでないようにすることができた。 また、微粒子追跡用ソフトウェアを新たに購入したことにより、界面上での輝点の解析速度を大幅に向上できた。このことにより作業の遅れの一部を来年度以降に取り戻すことができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに来年度の計画を推進する予定である。一分子観察実験のボトルネックであった画像解析作業について、微粒子追跡用ソフトウェアを購入して解析速度の大幅改善ができた。そこで、来年度に使用予定としていたタンパク質の種類を6種類から12種類すべてに広げ、吸着量補正式の精度と適用範囲の限界(とその理由)を明確にする。
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