2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new bioseparation material aiming at both suppression of surface contamination and repair of biomolecules
Project/Area Number |
21H01692
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (10335383)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | モデル生体膜 / リン脂質ポリマー / タンパク質 / 修復 / 動的ナノ空間 / 脂質平面膜 / 成長相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)タンパク質の二次元拡散性に基づく構造修復動作、(2)成長相の選択律、(3) タンパク質配向性に対する動的ナノ空間の寄与、を検討した。 (1)ウシ炭酸脱水酵素(CAB)を用いて、脂質膜やリン脂質ポリマー膜上での構造修復過程を検討した。1分子追跡法により、CABが低拡散状態と高拡散状態を断続的に繰り返しながら、高拡散状態のときにランダムに膜から脱離する過程が観察された。タンパク質の二次元拡散性とその構造状態とを比較した結果、低拡散状態は主に変性状態(構造が壊れれた状態)、高拡散性状態は天然状態(構造が回復した状態)に対応していることが分かった。これは前年度の成果と合致するものであった。それゆえ、構造が壊れたCABが膜上で構造を断続的に変性⇔天然状態の遷移を繰り返しながら、天然状態の際に膜界面から脱離することが分かった。そのきっかけはエントロピー推進であることも示唆された。 (2)タンパク質の分子内水素結合が安定であれば、成長相として天然状態、結晶状態、もしくはアモルファス状態が選ばれた。これらの相の選択律は過飽和度(=界面での実行濃度と溶解度との差)に依存しており、急激な過飽和度の増大によりアモルファス状態が選ばれやすいことも明らかになった。一方、分子内水素結合が不安定なタンパク質は過飽和状態になった場合、まずアミロイドが成長相として出現することが分かった。このように、成長相の選択には対象タンパク質の分子内水素結合安定性と過飽和度が鍵になっていることが分かった。 (3)液体秩序相と液体無秩序相に相分離する膜では、CABやリゾチウムが相境界に優先的に配向することを可視化できた。また、糖鎖脂質は液体無秩序相から固相に相分離する形で糖鎖脂質の領域を形成する。この場合、CABやリゾチウムは固相に優先的に配向した。これらの状態では成長相は(2)に従い選択されることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で挙げた検討項目を概ね検証できたので、進捗状況を上記のように評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
リン脂質ポリマー、種々の脂質分子(界面活性剤も含む)からなる脂質平面膜中で形成される動的ナノ空間の生成状況に規則性があるかを検討する。膜界面に形成される動的ナノ空間が構造修復の場として作用するメカニズムの詳細を明らかにする(配向するタンパク質の分子量や物性上の制約があるか)。そして、動的ナノ空間の分布状況の制御により、タンパク質の吸着抑制と構造修復の動作制御を試みる。具体的には温度変調やpH変動による相分離性の可逆的制御により、動的ナノ空間の生成消滅をダイナミックに制御する。
|
Research Products
(5 results)