2021 Fiscal Year Annual Research Report
メタン改質反応における熱力学平衡支配脱却を可能とするNi微粒子内包ゼオライト触媒
Project/Area Number |
21H01700
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多湖 輝興 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20304743)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤墳 大裕 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90757105) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | メタンドライ改質 / ゼオライト内包Ni微粒子触媒 / Silicalite-1 / Niフィロシリケート / 炭素析出抑制 / シンタリング抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度(2021年度)は,主にNi@Silicalite-1の開発と600℃と850℃におけるDRM反応試験を実施した.アモルファスシリカに酸化ニッケル(Niフィロシリケート,Ni-PS)を固定化したNi-PS/SiO2をNi源としてゼオライト合成母液に投入し,水熱処理を施すことにより,Silicalite-1の1次粒子粒界にNi-PSが形成された.水素還元後にNi-PS中の酸化Ni種が還元されてNi微粒子となりSilicalite-1の1次粒子粒界,すなわちゼオライト粒子内にNi微粒子が内包されたNi@Silicalite-1触媒が得られた.同様の方法により,Co-PS/SiO2をCo金属源とし,Co微粒子を内包させたCo@Silicalite-1の調製も成功した. Niフィロシリケートの担持量は還元後のNi微粒子サイズに影響する.Ni担持量3wt%~5wt%のNiフィロシリケートをゼオライト合成母液に投入し,Ni@Silicalite-1を調製した(Ni担持量は0.5wt%~3wt%).Ni担持量が2wt%までのNi@Silicalite-1では,Silicalite-1粒子内に微粒子状のNiが固定化されていることを確認した.上記で調製したNi@Silicalite-1を触媒に用い,メタンの二酸化炭素改質反応(DRM反応)活性試験を実施した.常圧固定床流通式反応器を用い,標準的な反応条件は原料ガス比CO2/CH4=1.0,反応温度650℃と850℃とする.低反応温度(650℃)でDRM反応を実施した.反応前後の触媒のNi粒子サイズは約5nm程度であり,シンタリングが抑制されていることを確認した.また,反応前後における細孔容積と結晶性の変化は微笑であり,炭素析出量は0.5wt%程度以下に抑制されていることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,超微粒子状態のNiやCoを,耐水熱安定性を有する多孔質担体であるSilicalite-1に内包させた触媒を開発する.研究の最終目的は,メタンのドライリフォーミングに対し,800℃以上の高温度反応条件における優れた熱的安定性と650℃以下の低温度反応条件における炭素析出抑制能を示す触媒の開発である.以下に令和3年度の進捗状況を列記する. 触媒の開発進捗状況:Niフィロシリケート,Coフィロシリケートを金属微粒子前駆体とした触媒調製法を開発すると共に,Silicalite-1粒子内へNi微粒子,Co微粒子,もしくはNi-Co複合金属微粒子を内包した触媒の開発に成功している.ゼオライトとシリケート(Ni,もしくはCoのシリケート)それぞれの成長速度を制御するために,ゼオライト合成母液組成(Ni添加量,構造規定剤添加量,溶液pH,水熱合成温度)を詳細に検討した結果,Ni担持量は0.5wt%~3wt%,Co担持量は0.3wt%~1wt%の範囲で微粒子状の金属をゼオライト粒子内に内包させることに成功している. DRM反応試験進捗状況:上記で調製したNi@Silicalite-1を触媒に用い,メタンの二酸化炭素改質反応(DRM反応)活性試験を実施した.常圧固定床流通式反応器を用い,標準的な反応条件は原料ガス比CO2/CH4=1.0,反応温度650℃と850℃とした.低反応温度(650℃)でDRM反応を実施した結果,約5nm以下のNi粒子がゼオライトに内包されることにより炭素析出の抑制が可能であること,さらに,高反応温度(850℃)でDRM反応を実施した結果,内包構造によりNiのシンタリングが抑制されることを明らかにした(約4nmから5nm程度への微小なシンタリングのみ観察).
|
Strategy for Future Research Activity |
(I)DRM反応における炭素析出抑制: 炭素析出抑制能の向上として,CoとNiの複合微粒子化を図る.昨年度の検討にて,Ni@Silcalite-1の調製と併せて,Co@Silicalite-1,およびNi-Co@Silicalite-1の開発に成功している.Coは二酸化炭素の活性化と固体炭素の部分酸化能に優れる.そこで,ゼオライト合成母液に投入する金属源として,アモルファスシリカ上にNi-PSとCo-PSを固定化した(Ni-PS+Co-PS)/SiO2を検討する.DRM反応試験としては,炭素析出が顕著となる600℃,20時間を予定している.長時間試験の結果より,炭素析出を抑制可能なNi粒子サイズ,およびNi微粒子固定化状態を明らかにする.NiとCoの複合化の検証は,反応試験と併せてXPSやXAFS等の分析を適用する. (II)DRM反応における耐熱安定性向上: 熱的安定性の確認として,Ni@Silicalite-1を触媒に用い,850~900℃でのDRM反応試験を実施する.現在,Ni担持量は1~2wt%である.3wt%以上の高担持量触媒におけるNi微粒子の耐熱安定性,20時間反応後における担体ゼオライトの結晶性,表面積を評価する.また,より過酷な条件として,水蒸気を添加した反応試験を実施し,触媒の汎用性を確認する. (III)DRM反応の応用展開: 上記の結果を基に,H2/CO比の調整可能なメタン改質を実施する.メタンのドライ改質ではH2/CO=1,水蒸気改質ではH2/CO=3であるが,合成ガス組成としてはH2/CO=2が適している.そこで,CH4/CO2/H2Oのデュアルリフォーミング反応によりH2/CO=2となる合成ガスの直接合成を検討する.さらに,炭化水素改質反応の新たな展開としてバイオマス由来エタノールの水蒸気改質反応へ応用する.
|