2021 Fiscal Year Annual Research Report
Redox性格子S種の直接電気励起で創る革新的アルカン脱水素の構造体触媒システム
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21H01701
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 准教授 (80548884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電気励起 / 構造体触媒 / 硫化物 / 脱水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
C3-C5アルカンの脱水素反応では気相中熱分解と逐次反応による副生成物の抑制が重要であり,触媒充填型反応システムの欠点でもある。本研究では,触媒反応場に直接電気エネルギーを投入して気相分解を回避し,かつ硫化物系触媒の表面格子硫黄種のレドックス機能性を電気的に励起することで,高活性と高選択的な低級アルカンの脱水素反応場を構造体触媒システムで創製する。本研究のポイントは,表面格子硫黄種のレドックス性を,電力投入の直接励起が可能な構造体触媒上に創出し,電力可変からそのレドックス性を巧みに制御すること,そして構造体触媒場がもつガス流れの整流性確保から過反応を抑制することであり,この二つの重畳効果によって革新的な脱水素システムを構築することである。2021年度は,電気エネルギーの投入が可能な触媒反応装置を製作し,装置の健全性把握を実施した。また,予め調製した硫化物触媒を炭化ケイ素基材上に構築し,それをH2S共存のC5脱水素に適用した。さらに,通電加熱方式の利点を明らかにするために,電気炉加熱による触媒反応特性も調査し,C5系オレフィン類の選択性に及ぼす影響を検討した。その結果,より大きな電流を供給することで触媒反応場の温度は上昇し平均温度は約500℃に達することがわかり,触媒部を中心に加熱された。また,触媒にC5アルカンを供給すると脱水素反応が進行し,供給電力量の増加により転化率は大きく増加することが明らかになった。通電加熱および電気炉加熱による加熱方式の違いが,脱水素特性に及ぼす影響を調べた結果,電気炉加熱に比べて通電加熱の方が,C5オレフィンの選択率が高くなった。触媒部だけでなく気相部も加熱される電気炉加熱に対して,通電加熱では触媒部が選択的に加熱できるために,過剰な熱分解反応を抑制し,高選択率でC5オレフィン類を得ることができるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初からの予定通りに通電加熱方式を採用した構造体触媒反応システムを構築し,その反応性評価も実施できた。この検討により,従来の加熱方式に比べて電気励起システムが優れた性能を示すことを明らかにした。さらに,次年度に計画していた反応機構解析装置の開発と解析方法についても既に確立した。令和四年度では,これらの知見に基づき,触媒への直接電力投入により硫化物の表面格子硫黄のレドックス性の促進が起こりうるか詳細に検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
C5脱水素反応に対して炭化ケイ素上に形成した硫化物触媒は,通電加熱により優れた性能を発揮することを明らかにした。令和四年度では,電気励起により優れた反応性を示した理由を明らかにするために,プロパンと硫化水素の供給を交互に繰り返す周期パルス測定を行なうことにより反応機構を検討し,密度汎関数計算を用いることにより提案する反応機構の妥当性を調べる。具体的には,触媒が作動状態に至った後に,硫化水素とプロパンを含む反応ガスをパージし,プロパンのみを供給してその生成物を質量分析計により検出する。続いて,再度反応ガスをパージし,硫化水素を供給して生成物を追跡する。これらの操作により反応機構を解析し,電気励起による加速効果を明らかにする。さらに密度汎関数計算により,素反応過程の活性化エネルギーを算出し,計算化学的観点から反応機構の妥当性について検証する。
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Research Products
(4 results)