2021 Fiscal Year Annual Research Report
前駆体集積法によるペロブスカイトナノ構造体の合成と革新的電解プロセスへの応用
Project/Area Number |
21H01710
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
荻原 仁志 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60452009)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ペロブスカイト / ナノ材料 / 前駆体集積法 / 電極触媒 / 複合酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前駆体集積法を用いて多様な複合酸化物ナノ材料の合成を試みた。その結果,ナノカーボン表面に前駆体溶液を滴下,乾燥,焼成するだけのシンプルなプロセスにて,AサイトカチオンとしてLa, Sr, Ba, Ca,BサイトカチオンとしてMn, Co, Fe, Ni, Ti, Cu, Alを含むペロブスカイト型酸化物群を合成できることを見出した。粉末X線回折測定,走査型電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡,窒素吸着法,示差熱重量分析などにより,合成した複合酸化物のキャラクタリゼーションを行った。複合酸化物はほぼ単一相であり,いずれもナノサイズの粒子であることを明らかにした。燃焼除去するナノカーボンの形状によって,複合酸化物ナノ材料の形態(ナノ粒子状あるいはナノファイバー状)を制御できることもわかった。さらに,走査型透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析により,複合酸化物が形成するメカニズムを提案した。2種類以上の金属前駆体を含む溶液をナノカーボンに滴下,乾燥すると,これら異種の金属前駆体がカーボン表面でナノレベル混合する。そのため,低温焼成であっても複合酸化物が形成され,多様なナノサイズの複合酸化物を合成できると結論した。 合成した複合酸化物ナノ材料を電極触媒へと展開する研究を展開している。本年度では合成した複合酸化物ナノ材料が,水電解のアノード触媒として高活性を示すことを見出した。この高い触媒活性は合成した複合酸化物の高い結晶性とナノサイズに由来することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のひとつである「多岐にわたる複合酸化物ナノ材料の合成」を達成し,さらに合成した複合酸化物が水電解アノード触媒として有望であることを明らかにした。また,これらの成果を学術論文として発表した。以上より,本研究は現在までおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究より,ナノカーボン表面を反応場にして多岐にわたる複合酸化物ナノ材料を合成できることがわかった。そこで,合成した複合酸化物ナノ材料を電極触媒へと展開する研究を推進する。 前駆体集積法はナノカーボン表面を反応場として金属酸化物を合成するプロセスである。そこで,前駆体集積法の調製条件を制御することで,ナノカーボンを取り除くことなくカーボン表面に微細な複合酸化物を形成する。この複合酸化物とナノカーボンのコンポジット触媒はカーボンの高い電気伝導性と複合酸化物の触媒活性がシナジー効果を発揮すると期待される。このような新規材料の触媒活性評価を行う。さらに,これまでに複合酸化物が触媒として用いられることが少なかった有機分子の電解酸化に対して,合成した複合酸化物群の適用可能性を探る。
|