2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new route for the production of isoprene
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21H01711
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 智司 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30187190)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イソプレン生成 / リモネン / 3-メチル-1,3-ブタンジオール / 脱水反応 / 3-メチル-2-ブタノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で触媒探索を予定したイソプレンを触媒化学的に製造可能な新規な3つの生成ルート、具体的には反応①「リモネンの解重合」、反応②「3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水」、反応③「3-メチル-2-ブタノンの脱水」を効率よく進行させる触媒に必要な機能は何かを解明する過程で、高効率の触媒を提案し、触媒として機能する物質を学術的に体系化することが本研究の目的である。 反応①「リモネンの解重合」反応は大きな吸熱反応であるため高温・常圧流通条件下でジルコニアおよび修飾アルミア触媒を用いてリモネンの気相接触反応を検討した結果、400~550℃の高温でリモネンの脱水素反応が促進されて、炭素析出が優先的に起こってしま、目的のイソプレンを得ることがまだできていない。反応条件および触媒系の検討の必要がある。 反応②「3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水」について、3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水反応と同時に中間体と考えられる3つの不飽和アルコールの脱水反応特性を調査した。種々の希土類ジルコン酸塩を用いた低温での3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水反応を検討し、Y2Zr2O7触媒が不飽和アルコール生成能力が高く、有効な触媒候補として挙げられた。反応条件を検討した結果、イソプレンへの脱水反応では、Y2Zr2O7触媒が375℃で効率的なイソプレン生成活性を示すことを確認した。 また、反応③「3-メチル-2-ブタノンの脱水」反応では、イソプレン生成を確認したが、触媒上でイソプレンの二量化によるデゼン類の生成が併発し、イソプレン収率は30%程度と低くため、効率的にイソプレンを生成できる触媒系を提案するまでに至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 目的とする3つのイソプレン生成反応、①「リモネンの解重合」、②「3-メル-1,3-ブタンジオールの脱水」、③「3-メチル-2-ブタノンの脱水」を効率よく進行させる触媒を体系化するために下記を検討した。 反応①について、この反応は大きな吸熱反応であるため高温・常圧流通条件下でジルコニアおよび修飾アルミア触媒を用いてリモネンの気相接触反応を複数の触媒で検討した結果、400~550℃の高温でリモネン脱水素反応が促進されて、好ましくない炭素析出が優先的に起こった。結果的に触媒上への炭素析出と二量化以上の重合により目的のイソプレンはほとんど生成できなかった。触媒の検討に加えて、解重合の条件検討が必要である。 反応②「3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水」について、3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水反応と同時に中間体と考えられる3つの不飽和アルコールの脱水反応特性を調査した。300℃で試験した希土類ジルコン酸塩の中でY2Zr2O7が不飽和アルコール生成能力が高く、有効な触媒候補として挙げられた。また、Y2Zr2O7触媒は生成した不飽和アルコールの脱水が同時に起こり、イソプレンが生成することがわかった。さらに、この触媒の反応温度・接触時間依存性を調査して、イソプレン生成の最適反応条件を決定した。反応温度を375℃では、選択的にイソプレン生成が起こり、高収率でイソプレンを得ることができることを確認した。 反応③では、アルミナをはじめ種々の酸化物およびリン酸塩などの触媒候補を検討した結果、イソプレンの生成を確認したが、その収率は400℃で30%程度であった。触媒上で二量化反応(デゼン類の生成)が併発し、反応初期から活性劣化が認められ、効率的にイソプレンを生成できる触媒を開発するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
検討した3つのルートについてそれぞれの問題点を克服するために以下に各反応における今後の検討課題と方針を記す。 ①「リモネンの解重合」:この反応は大きな吸熱反応であるため高温が必要であるが、平衡的に解重合を促進するために、反応圧力の影響を検討する必要がある。分子数が増加する解重合反応に有利な低圧化、具体的には「減圧」流通条件下におけるリモネン分解(イソプレン生成)反応を検討していく予定である。また、触媒上でのコーキングが問題となるため、コーキングを起こさない触媒の探索および無触媒で熱化学反応条件下での反応圧力依存性を広い温度範囲で検討するすいることで「リモネン解重合」の可能性を探る。 ②「3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水」:Y2Zr2O7触媒により3-メチル-1,3-ブタンジオールの脱水反応が300℃でも進行し、中間体の3つの不飽和アルコールに加えてイソプレンも生成することが判明したので、種々の希土類ジルコン酸塩の中でY2Zr2O7触媒が不飽和アルコール生成およびイソプレン生成能力が高い理由を解明するために、不飽和アルコールの生成選択性・活性の高かったY2Zr2O7触媒を中心にイソプレン生成に必要な触媒の酸・塩基測定および触媒毒物質を用いた被毒実験を行う。 ③「3-メチル-2-ブタノンの脱水」:3-メチル-2-ブタノン脱水では転位を伴うことが知られているため、メチル基の置換数の異なるブタノンおよび3,3-ジメチル-2-ブタノンからのブタジエン類の生成活性とを比較して、イソプレンの効率的生成の可能性を再度検証する。また、デゼン類の生成を抑制するために、触媒の酸性を制御することがイソプレン収率の向上のキーであることから、今後は、最も触媒性能の高ったアルミナ触媒に第二成分の添加することで副生成物の抑制ができるかを再度検討する。
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Research Products
(11 results)