2021 Fiscal Year Annual Research Report
Verification of tristability of nuclear spin polarization in single quantum dot and construction of a unified model including nuclear quadrupole effect
Project/Area Number |
21H01745
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10221722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍜治 怜奈 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40640751)
笹倉 弘理 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90374595)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子・核スピン結合系 / 半導体量子ドット / ナノ構造 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
単一量子ドットに適用可能なNMR測定系の構築,電子-核スピン結合系の数値シミュレーション,核スピン分極の三重安定状態の実験的調査を行った.NMR測定で核四極子相互作用について直接的に調べるため,試料に効率よくRF磁場を照射するための電気回路が必要であった.簡易な遺伝的アルゴリズムでは回路が最適化できなかったため,整合を取らずに高周波アンプでRF磁場を増幅する手法を選択した.現在は,複数の任意波形発生器を用いた測定シーケンスの実装を行っている.数値シミュレーションでは,異常ハンル効果が発現する条件を探るため,核四極子相互作用の主軸分布に着目した計算を実装した.計算から,結晶成長方向から大きくずれた主軸や相互作用の二軸性が異常ハンル効果の発現に必要であるという画期的な結果を得た.また異常ハンル効果の時間分解測定を行い,従来モデルでは説明できない結果を得てモデルを再考し,横磁場および縦磁場配置でこれまでに得た時間分解・定常発光測定データの両方を矛盾なく説明できる統一モデルを構築できた. 核スピン分極の三重安定性は理論的に予言されただけであったため,実験的な観測を目指して定常発光測定を行った.提案理論では電子-核スピン間の相関時間が非常に重要であるため,実験では試料温度の変化からこれの制御を試みた.実験結果は相関時間が制御されたことを示唆したが,三重安定性の発見には至らなかった.一方で,相関時間の変化に伴って核スピン分極の双安定曲線が一重から二重なる様子を初めて観測した.
構築した新規モデルでは異常ハンル効果が起きるVoigt配置だけでなく,Faraday配置で観測される核スピン分極の双安定性,三重安定性も再現できることを確認した.これにより初期の目的が1年目で達成できたと言える.この成果は2つの論文として投稿予定で,現在準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量子ドットにおける超微細相互作用を介した核スピン分極形成過程の時間分解測定をしたことにより,先に提案した形成モデルの破綻を確認し,それを改善し時間分解測定データ,定常測定データの両方を矛盾なく説明できる新規モデルを構築できた.このモデルでは異常ハンル効果が起きるVoigt配置だけでなく,Faraday配置で観測される核スピン分極の双安定性,3重安定性も再現できることを確認した.これにより初期の目的が1年目で達成できたと言える.この成果は2つの論文として投稿予定で,現在準備中である. 次年度の計画で述べるように,構築したモデルを更に実験的に検証していく必要があるが,これまでに得ていた実験結果は矛盾なく説明することができている.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の実験を計画している. 1.歪印加デバイスによる核四極子相互作用(NQI)の直接変調(NQIの歪チューニング): 数値計算から数度の主軸傾斜で 1桁程度核スピン緩和時間が変化するためNQIは大きな影響を持つことが分かっている. 新規に提案した電子・核スピン結合系ダイナミクスのモデルによる計算では,NQIの主軸の傾斜が異常ハンル効果発現に非常に重要であることが分かったため,歪印加デバイスによるNQIの直接変調を試み,ハンルカーブの変形度合いを調査するとともに,構築したモデルでの計算結果との比較を行う. 2.相関時間制御による3重安定領域の探索:昨年度行った「温度変化による相関時間変調」では,相関時間変化量の不足により3重安定領域は発見できなかった.このため本年度は,核スピン分極の双安定領域での不安定解の測定と同様のポンプ・ダーク・リポンプ法を用い,大きな双安定領域に隠れたmid-branchと呼んでいる第3の安定状態の検出を試みる.この手法はMakhoninらによる双安定領域にある不安定解検出法に類似の手法であり,すでに測定プログラムの作成は終了している. 3.希土類添加結晶での提案モデルの検証:近年注目を浴びているエルビウム添加結晶では1個の電子と数個のホスト結晶原子核とのスーパー超微細相互作用であるため,量子ドットより系が簡単になりダイナミクスが分かりやすく,よりミクロな視点からモデルを構築するために有益である.エルビウム添加結晶は通信波長帯量子メモリとしての研究が精力的に行われているが,核磁場揺らぎによる電子コヒーレンス低下が問題となっている.この状況で提案モデルが貢献できればインパクトが大きい.当初予定していなかった項目であるが,1年目で期待以上の成果があったので,この項目を実施する.同位体純化Er結晶は今年度より新たに分担者となった日本大学俵毅彦教授から提供いただく.
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Research Products
(13 results)