2021 Fiscal Year Annual Research Report
液体流動と電子材料界面における動電現象解明と新規電子デバイス創成
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21H01755
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡田 健 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90616385)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グラフェン / 固液界面 / 流動 / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の計画通りナノ流路を用いた実験系の構築と微細加工改質技術によるナノ流路の作製、および流路内へのグラフェンと電極のアッセンブリを行った。半導体微細加工プロセス(一部では精密機械加工プロセス)を用いて流路の鋳型を作製した。作製した鋳型にPDMS(ポリジメチルシロキサン)を流しこみ固化することで流路部とした。液体流動と界面を形成するグラフェンは化学気相蒸着法によって合成し、すでに確立された任意基板へのグラフェン転写プロセスを適用することでガラス、または熱酸化膜シリコンへグラフェンを転写した。このプロセスにおけるグラフェンのリンクル形成を抑制するため基板表面を0.1N水酸化カリウム水溶液による親水化が重要であることが明らかになった。また、グラフェン転写後の電極アッセンブリによってグラフェンを内壁にもつナノ流路を作製することができた。このようにプロセスの最適化によって再現性よく定量評価に耐えられる評価デバイスの作製に成功している。 さらに流動によってグラフェンに生じる起電力計測を行った。温度、湿度、パーティクルを制御した清浄な環境を電気ノイズを遮断できる壁材料を用いて作製することでマイクロボルトレベルの微小電気シグナル計測が可能であることが実証された。また、流水印加ポンプ、送液チューブ、コネクタなどの適切な選定によって脈動がなく一様な流れを印加することが可能であることが実証できた。 以上のように、当初の目的を概ね達成できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画研究を実施し、様々な形状、サイズの流路作製とデバイス計測用チップ内への電極/グラフェンのアッセンブリに成功している。またノイズ対策、温湿制御、汚染除去のノウハウを得ており再現性の高い実験系の構築に成功したといえる。また、次年度実施予定の項目にも一部着手していることから研究の進捗は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通り、以下の項目を実施する。今年度作製したナノ流路を基本構成とし、電気シグナル計測、物性評価、流体観察・解析を行う。予め外部抵抗によって出力を最大化し十分なシグナル強度を確保した条件下において、流速、流路サイズ・形状、液体粘度を変化させ、流れの状態に応答する電気シグナル強度をマイクロ~ミリ秒の時間スケールで計測する。また、流動存在下で分光計測を行う。ラマン分光法を用いて2500~3000 cm-1の波数域における水のOH伸縮とグラフェンのG’バンドの強度比などから電子状態を解析する。また液体流動とグラフェンに対して垂直な磁場を印加したホール効果測定に挑戦しキャリアの同定を行う。ここでは既存の電気計測機器と磁場発生装置を用い、本研究に特化した自作の計測システムを構築する。さらにポリスチレンビーズを用いた粒子追跡によって流体の可視化を行う。暗視野顕微鏡下において点分布関数を考慮すれば50 nmの粒子を数nmの空間分解能で光学的に追跡できると期待できる。
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