2022 Fiscal Year Annual Research Report
液体流動と電子材料界面における動電現象解明と新規電子デバイス創成
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21H01755
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡田 健 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90616385)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グラフェン / 固液界面 / 流動 / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の実施計画にある2-1電気シグナル計測とキャリア同定、2-2ラマン測定、2-3流体解析、および2-4統計解析を行った。前年度に確立した微細加工プロセスを用いて作製した流路とグラフェンアッセンブリ法を用いた計測システムを基本構成とし、流速や流路サイズを変化させ流動状態を制御した条件下において起電力測定を行った。その結果、流動状態と起電力には明確な相関があり、発生電圧の分散は層流条件下では見られないことが明らかになった。また発生電圧と電力は、流路内において乱流から層流に遷移する領域が存在することではじめて計測されることが明らかになった。一方、現在は20ミリ秒の時間分解能で計測しているが、流動状態を追従するためには1桁の時間分解能向上が必要であることが判明したため、シグナル-ノイズ比改善を目的に計測システム全体のノイズマネージメントをさらに強化することを新たな検討項目に追加する。また、ラマン計測を実施し、流動状態に応じたグラフェンの電子状態と水の状態解析を行った。計測システムに問題はないが計測条件の最適化に課題が残った。流体解析は当初予定していたポリスチレンビーズによる粒子解析系の構築に加え、数値シミュレーションによる流動の可視化を行った。層流モデルを用いた数値シミュレーションによって流路内上流側において流動状態は乱れ、徐々に層流に遷移する過程が観察された。この遷移過程は起電力シグナルの安定性と出力に対して相関があり、流動状態に起因する電気シグナルの起源解明につながると期待できる。同一サイズの流路を用いた場合においても流入口形状によって流動遷移を制御できることがわかり、発電デバイスとして高出力化に期待ができる。また、最終年度の実施項目である代替材料の探索についても着手し、光学的、および固液界面の評価を行った。以上のように、当初の目的を概ね達成できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画研究を実施し、前年度の実施項目で得られた知見を基に電気シグナル計測、ラマン測定、流体解析、統計解析を行った。乱流、および層流と起電力には統計的有意差があることが明らかになり、数値シミュレーションによる流体解析手法の目途がたったことなどから計画を実施できたといえる。また、新たな知見を得ていることから当初の目的以外にも研究の発展が期待できる。このことから研究の進捗は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通り、以下の項目を実施する。これまでに確立した計測手法を基本構成とし、電気シグナル計測、物性評価、流体解析、およびデバイス評価を行う。予め外部抵抗によって出力を最大化し十分なシグナル強度を確保した条件下において、流速、流路サイズ・形状、液体粘度を変化させ、流れの状態に応答する電気シグナル計測を行う。このときシステム全体の最適化を図り時間分解能をこれまでの20ミリ秒からマイクロ秒に向上させる。さらに、液体流動とグラフェンに対して垂直な磁場を印加したホール効果測定を行いキャリアの同定と定量に挑戦する。また、流動存在下におけるラマン分光計測を行い、水のOH伸縮とグラフェンのG’バンドの強度比などから流動中の水分子の挙動とグラフェンの電子状態解析を同時に実現する条件を探索する。以上の計測データは流体の数値シミュレーションによる可視化解析によって相互相関を議論する。さらに最終年度の目的であるデバイス評価を行う。水流とグラフェンが接する面積、および単位流速あたりの起電力を定量的に算出し、乱流層流遷移を数値化したモデルを構築し評価する。
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