2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development and application of nanocarbons confined in zeolites
Project/Area Number |
21H01761
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 秀樹 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 教授(特定雇用) (80376368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 真伸 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00271916)
宮本 和範 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40403696)
西原 洋知 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (80400430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノカーボン-ゼオライト複合体 / 固体蛍光体 / 黒体放射発光素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ゼオライトの細孔内に0-3次元ナノカーボンを生成させ,かつ,それらをゼオライトフレームワーク内に制約することで,多様な機能性を発現するナノカーボン-ゼオライト複合体群を創製することを目的とする:① ゼオライトのケージ型細孔空間を反応場とするship-in-a-bottle合成によって,0次元ナノカーボン(0-NC)を生成させ,ケージ間をつなぐネック細孔による隔離効果により,0-NC間の接触による消光を防止する。これによって0-NCを高濃度で配置することを可能とし,高輝度な固体蛍光体を開発する。② 1次元または3次元細孔を有するゼオライト内に,1次元または3次元ナノカーボン(1-NC/3-NC)を制約した1-NC/3-NC-ゼオライト複合体を創製し,光通信への応用を指向した高輝度な黒体放射発光素子の開発に取り組む。 2021年度は,主に②について取り組み,一次元細孔内におけるカルビン合成を目的とする反応分子動力学(ab initio MD)シミュレーションを実施し,5種のゼオライト(コード:CDO, ITW, MTF, RTE, RWR)において,それぞれカルビンの合成が可能であることを明らかとした。また,そのカルビンの生成過程では,炭素間結合の生成・開裂と炭素原子の入れ替わりが頻繁に生じ,極めて複雑な反応経路を通ることを見出した。さらに,黒体放射発光素子の観察,評価のための顕微鏡+マニピュレータシステムの構築を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6種のゼオライト(コード:CDO, ITW, MTF, NSI, RTE, RWR)の一次元細孔内におけるカルビン合成を目的とする反応分子動力学(ab initio MD)シミュレーションを実施した。6種のゼオライトのうち最も小さなウィンドウサイズ(0.45 x 0.26 nm)を持つNSIでは,ガス状炭素分子の末端同士が順に結合し,カルビンの形成が確認できた。しかし,このカルビンとNSIとの相互作用エネルギーは炭素原子1個当たり+6.7 kJ/molとなり,エネルギー的に不安定であることが分かった。一方,NSIよりもウィンドウサイズの大きな5種のゼオライトでは,それぞれカルビンが形成されるものの,その反応過程において結合の生成・開裂と炭素原子の入れ替わりが頻繁に繰り返され,最終的に生成されたカルビン鎖中の炭素原子の並び順が不規則なものとなった。この反応様式は,CDO,ITW,MTF,RWRにおいても同様であった。このように複雑な反応が生じる理由は明らかとなっていないが,炭素原子サイズよりも空間的に大きなケージ状細孔の存在が寄与していると考えられる。そして,カルビンと5種のゼオライトとの相互作用エネルギーを計算したところ,全て負値となり,カルビンが安定に生成されることが分かった。以上より,提案する新規カルビン合成法の妥当性を確認することができた。 黒体放射発光素子の観察,評価のための顕微鏡+マニピュレータシステムの構築を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,実験によるナノカーボン-ゼオライト複合体の合成・評価と,計算機上におけるナノカーボン-ゼオライト複合体の合成・評価を同時に実施し,両者の相互フィードバックによって効率的な材料創製を推進する。 ■ 実験-材料合成:種々のゼオライトを用いたナノカーボン群の合成を行う。その合成法としては,以下の2つの手法を予定する。① 有機分子含浸炭化法:クエン酸,芳香族炭化水素,尿素,ホウ酸などをゼオライトの細孔内に室温にて含浸・吸着させた後,昇温・炭化させる。② C2ガス吸着法:C2ガスをゼオライトに吸着させ,細孔内にて重合させることにより,ナノカーボンを生成させることを検討する。 ■ 実験-材料評価:実験により得られた各種ナノカーボン-ゼオライト複合体の機能性の評価およびキャラクタリゼーションを実施する。① 蛍光特性:蛍光分光高度計+積分球により,0-NC-ゼオライト複合体の固体蛍光スペクトルの測定,および量子収率の評価を行う。② 黒体放射発光特性:近赤外分光器への切り替えが可能なデジタル顕微鏡システムを構築し,1-NCおよび3-NC-ゼオライト複合体の発光挙動を観測する。③ キャラクタリゼーション:RamanスペクトルおよびXPSによるナノカーボンの炭素構造評価,TG-MSを用いたナノカーボンの熱分解・燃焼挙動の測定による元素分析を行う。 ■ 計算機実験:① 合成シミュレーション:ReaxFFポテンシャルを用いた反応分子動力学法(LAMMPSソフトウェア)や,ab initio 反応分子動力学法(CP2Kソフトウェア)によるナノカーボン-ゼオライト複合体の大規模合成シミュレーションを行う。② キャラクタリゼーション:Gaussian16ソフトウェアを用いた時間依存密度汎関数法(TD-DFT)によるUV吸収/蛍光スペクトルの計算などを実施する。
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Research Products
(3 results)