2021 Fiscal Year Annual Research Report
アキラル構造からなる光角運動量ソーターの多空間同時光計測による研究
Project/Area Number |
21H01782
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三宮 工 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (60610152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 稔 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00273798)
斉藤 光 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (50735587)
秋葉 圭一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (80712538)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / ナノフォトニクス / カソードルミネセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
光の角運動量選択は量子通信・暗号化に不可欠な要素である。これまで角運動量選択には、対掌性をもつキラル構造が提案されてきたが左右回転パリティへの応答が同等でなく、定量性・堅牢性に欠けていた。本研究は、①アキラルな構造を用いた光アンテナ・導波路を用いて、両パリティに同等に応答する角運動量ソーターを実現し、更に、②この計測のために、光のエネルギー・励起位置・発光位置・発光角度の全情報を同時に得られる多空間同時計測カソードルミネセンスを開発するものである。 2021年度は、①の角運動量ソータの一例である、バレー・プラズモニック結晶をベースとした、トポロジカルに保護されたプラズモニック導波路を設計・作製し、②で開発した4次元カソードルミネセンス装置を用いてその導波を可視化することで、その機能を実証した。理論計算と実験結果をあわせることで、この導波がバレー結晶を張り合わせたエッジで、トポロジカルに保護されていることを確認した。 また、①の新たな構造として、誘電体の鎖構造を提案した。大きさの異なる誘電体球をジグザグに配置することで誘電体球内部で電場が回転する光スピン伝搬モードが方向性をもって伝搬する構造を見出し、数値計算により動作することが確認できている。この構造は、2次元結晶系と異なり、滑らかなカーブをもった導波路など幾何学的な自由度が高い。 ②の装置開発に関しては、4次元計測系がおおよそ確立され、ハードウェア整備が整った。解析ソフトウェアも通常使用できる状態にまで完成した。引き続き改良をすすめているところではあるが、応用計測が可能な段階に到達している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度中に、バレー・プラズモニック結晶をベースとした、トポロジカルに保護されたプラズモニック導波路の設計・作製・計測が完了した。光スピン依存とまではいっていないが、アンテナ構造も組み合わされており、この成果は本研究の目的とする、光角運動量ソーターデバイスの実現である。この成果はIF11.1のNano Letters誌で公表され、さらにプレスリリースもされている。 さらに、シリコン粒子を並べた非対称な鎖構造を用いた全くあたらしい光スピンソーティングデバイスの設計にも至っている。これらは数値計算により動作することが確認できており、新規デバイスとして特許出願にも至っている。この成果は、OpticsExpress誌で公表された。 ナノアンテナ構造としては、これまの金属や誘電体だけでなく、2次元結晶系であるMoS2ナノ粒子が有効に働くことも確認でき、新たなアンテナが開拓できている。MoS2系では、電子スピンと光スピンとのカップリングが期待できる有望なシステムである。この成果はNanophotonics誌で公表されている。 また、金属ナノアンテナ構造として、合金ナノ粒子も検討しており、合金ナノアンテナの詳細な構造を電子顕微鏡解析した論文成果もJournal of Physical Chemistry C誌で公表した。この成果は株式会社日本電子との共同研究であり、企業WEBサイトでもリリースされている。 このように計画以上に研究は進んでおり、また多くの論文成果も出ており、計画以上に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書にも記載したとおり、本年度は以下の項目について研究を実施する。 ・アンテナおよび導波路の作製 第一年度に設計した構造をベースに、各要素(アンテナ、導波路)を作製・実測する。すでに球体アンテナ構造が両パリティに同等な円偏光アンテナとして機能することがわかっているが、今回は特に、複数の球体からなる構造における円偏光アンテナ、それを発展させた鎖導波路について円偏光特性を調査する。また、単一球アンテナついても、ウイスパリングギャラリーモードの利用も検討する。試料作製には、リソグラフィーと自己組織化を併用する。リソグラフィーは分担者の九州大学斉藤グループと実施し、自己組織化をベースにした試料作製に関しては同じく分担者の神戸大学藤井グループと実施する。 ・新規カソードルミネセンス法の開発と実測 現在までに、走査型透過電子顕微鏡をベースにした角度・波長・円偏光情報を同時に取得するナノスケール光マッピングである完全偏波4次元CL(4D-CL)法がおおよそ確立できている。この手法によりあらゆる放射角・エネルギーで相対位相を含む全偏光情報を分解することができる。しかし、全偏光情報取得には6つの独立した偏光計測が必要であり、長時間計測を実施することになり、特に今回の計測に必要となる高倍率の計測では、サンプルドリフトが問題となる。ドリフトにより生じたマッピングの歪みを補正する必要があるため、解析ソフトウェアを改良し、アフィン変換等を新たに導入することで像の歪みをキャンセルするアルゴリズムを確立する。これらを用いて、作製された光ナノアンテナ・導波路の計測を行っていく。さらに、通常のCL法では、特定できなかった発光位置分解を実施する。ハードウェアおよびソフトウェアを整備し、実測可能なシステムを確立する。
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