2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research of synthetic antiferromagnet for THz devices with Brillouin light scattering
Project/Area Number |
21H01791
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊池 伸明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80436170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (10292278)
島津 武仁 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (50206182)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ブリルアン散乱 / 磁性薄膜 / スピン波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、磁性積層膜を用いた人工フェリ/アンチフェロ構造を用いたテラヘルツ波領域でのスピン波デバイスを提案し、電磁波のエネルギーを効率的に伝送・吸収・変換できる材料探索・制御方法の解明を目指している。本研究で対象とする0.1-1THzという周波数領域は、既存の磁気的測定手法の適用が困難であることから、ファブリー=ペロー干渉計を用いたブリルアン散乱測定装置の構築を進めた。ブリルアン散乱測定装置は二枚の半透鏡を組み合わせた単純な構造であるものの、光の波長に比べても十分に高い精度での平行性と間隔の制御が必要である。また、磁性体のスピン波による散乱は格子振動による散乱に比べて小さいため、長時間の積算測定に対応するための電気的および環境の安定性が要求される。 そこで、研究計画初年度の令和3年度は、ブリルアン散乱測定装置の構築に取り組んだ。まず、高輝度のレーザーの導入により信号強度の増強を測り、波長に合わせた光学系に置き換えた。次に、既有の装置の制御系は主に10-50GHz程度の帯域を想定したものとなっていたため、100GHz以上の帯域に対応できるようより高精度な制御系(ハードウェ・ソフトウェア)の組み込みを行った。さらに、0.1℃以下での温度制御が可能な温度制御系を構築した。これまでに、100GHz以下での格子振動によるピークの計測は可能となっている。しかしながら、より長時間の安定性が求められるスピン波の計測には至っておらず、改善が必要である。また、これらの装置構築と平行しておもにCo/Ru積層膜などの人工反強磁性構造の作製と特性評価も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主にブリルアン散乱測定装置の構築を進めた。現状は、信号の十分大きなアクリル樹脂のフォノンなどで100GHz以下の帯域での計測は可能となっているが、本課題の対象とする100GHz以上の帯域での磁気的計測に十分な安定度を実現できていない。レーザーや干渉計の制御系などについてはハードウェアの導入は想定通り完了している。また、ソフトウェアの整備もほぼ完了しており、測定装置そのものの整備はほぼ想定通りに進んでいる。一方で、温度ドリフトや振動抑制などの環境制御については、原因の特定と対策に手間取っており遅れている。温度ドリフトに関しては、現在干渉計に組み込む温度補償用のフィードバック機構を開発中であり、翌年度前半の実装を目標にしている。振動の抑制については、ブリルアン散乱共振周波数の異なるダンパー等の組み込みを行っている。 また、本年度は主として計測系の構築に注力していたため、平行して進める予定であった人工反強磁性構造の作製と特性評価も遅れており今後の加速が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに述べてきたように、本研究の目的はテラヘルツ領域での磁気測定の強力なツールとなりうるブリルアン散乱装置の構築と、それを活用したテラヘルツ領域でのスピン波挙動の解明である。そのため、第一段階としてテラヘルツ領域で安定した計測が可能なブリルアン散乱装置の構築に注力する。進行が思わしくないことから、装置開発および薄膜作製を担当できる技術員を雇用し、専任で研究を進める予定である。
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