2021 Fiscal Year Annual Research Report
Determination of topological quantum numbers and search for novel electronic phases in Kitaev quantum spin liquid materials
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21H01793
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 顕一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00634982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 理行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585159)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キタエフスピン液体 / マヨラナ粒子 / トポロジカル物性 / チャーン数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ごく最近、キタエフ量子スピン液体の候補物質である二次元蜂の巣格子を持つ磁性絶縁体α-RuCl3において、マヨラナ粒子の存在を示唆する半整数量子熱ホール効果が観測され、マヨラナ粒子を利用した環境ノイズに強い次世代トポロジカル量子計算の実現に向けて大きな注目を集めている。しかしながら、現実の物質中で、外部摂動に対して、どの程度マヨラナ粒子が安定的に存在しうるのかはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、キタエフ量子スピン液体物質α-RuCl3において、マヨラナ粒子が発現する条件とその安定性を明らかにした上で、トポロジカル量子相を制御する実験手法を確立することを目指している。そのためには、マヨラナ粒子に由来する創発準粒子の出現の有無を規定するトポロジカル不変量(チャーン数)を実験的に決定することが重要となる。 当該年度は、α-RuCl3において、2次元ハニカム格子面内で磁場印加方向を回転させながら比熱測定を行い、理想的なキタエフ量子スピン液体において期待される6回対称性を示すことを明らかにした。この結果は、現実物質であるα-RuCl3において、マヨラナ準粒子が存在することを示唆する結果と矛盾しない。 また、理想的なキタエフ量子スピン液体に非キタエフ項が加わると、面内からずれた磁場角度方向に対して、摂動の大きさに応じて、特徴的なチャーン数の角度依存性を示すことが理論的に指摘されている。そこで当該年度は、チャーン数の3次元磁場角度依存性を詳細に調べるために、無冷媒希釈冷凍機と2軸回転機構を組わせ、極低温下で比熱の3次元磁場角度依存性を測定できる実験系を構築した。次年度以降に、本システムを用いて、非キタエフ相互作用がキタエフ量子スピン液体の発現に与える影響を定量的に評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、無冷媒希釈冷凍機と2軸回転機構を組わせ、極低温下で比熱の3次元磁場角度依存性を測定できる実験系を構築しており、これを足掛かりに、現実物質において、非キタエフ相互作用がキタエフ量子スピン液体の発現に与える影響を定量的に 評価することが可能であると判断したため。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに、次年度以降に、本システムを用いて、非キタエフ相互作用がキタエフ量子スピン液体の発現に与える影響を定量的に評価する予定である。 た、電界効果による新奇トポロジカル相の探索も行う。キタエフ量子スピン液体においては、キャリアドープや金属との近接効果によりトポロジカル超伝導が出現する可能性が理論的に指摘されているため、電界効果によるキャリアドープを行うことで、新奇超伝導相を探索する。
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Research Products
(27 results)
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[Presentation] S=3/2希釈量子スピン系Ba2Co1-xZnxGe2O7における二つのボーズアインシュタイン凝縮相2022
Author(s)
渡辺義人, 三宅厚志, 厳正輝, 池田暁彦, 徳永将史, 水上雄太, 橋本顕一郎, 芝内孝禎, 車地崇, 徳永祐介, 有馬孝尚
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] π電子-プロトン相関型分子性導体κ-H3(Cat-EDT-ST)2における静水圧力および一軸性圧縮下電気抵抗測定2022
Author(s)
北山元晴, 出倉駿, 藤野智子, 上田顕, 郷地順, 上床美也, 今城周作, 金道浩一, 浅井晋一朗, 益田隆嗣, 橋本顕一郎, 田嶋尚也, 森初果
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] 第一原理計算による有機導体(EDO-TTF-I)2ClO4の電子状態の解析2022
Author(s)
川村泰喜, 橋本顕一郎, 吉見一慶, 石川学, 中野義明, 大塚晃弘, 矢持秀起, 春木理恵, 熊井玲児, 足立伸一, 小林晃人
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] 極低温下でのキタエフ候補物質α-RuCl3の磁場角度分解比熱測定2022
Author(s)
今村薫平, 水上雄太, 吉田悠生, 橋本顕一郎, 田中桜平, 原澤龍平, 栗田伸之, 田中秀数, 藤本聡, 山田昌彦, 村山陽奈子, 笠原裕一, 松田祐司. E. G. Moon, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] レーザー励起光電子顕微鏡によるBaFe2As2およびFe(Se, S)のネマティックドメインの観察2022
Author(s)
大西朝登, 影山遥一, Cedric Bareille, 谷内敏之, 石田茂之, 水上雄太, 橋本顕一郎, 永崎洋, 辛埴, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] 電子線照射により不純物を導入した新奇カゴメ金属CsV3Sb5における輸送特性評価2022
Author(s)
劉蘇鵬, 六本木雅生, 田中優之介, 向笠清隆, M. Konczykowski, Brenden R. Ortiz, Stephen D. Wilson, 水上雄太, 上床美也, 橋本顕一郎, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] Kitaevスピン液体候補物質α-RuCl3における量子相転移の観測2021
Author(s)
鵜飼柚希, 下邨真輝, 末次祥大, 笠原裕一, 浅場智也, 村山陽奈子, 栗田伸之, 田中秀数, 橋本顕一郎, 水上雄太, 芝内孝禎, 松田祐司
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] Kitaevスピン液体候補物質α-RuCl3の磁場中熱伝導測定2021
Author(s)
下邨真輝, 鵜飼柚希, 末次祥大, 笠原裕一, 浅場智也, 村山陽奈子, 栗田伸之, 田中秀数, 橋本顕一郎, 水上雄太, 芝内孝禎, 松田祐司
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] 鉄系超伝導体FeSe1-xTexにおける磁気輸送特性の圧力効果2021
Author(s)
向笠清隆, 石田浩祐, 岡田昂, 松浦康平, 杉村優一, M. Qiu, 斎藤三樹彦, 水上雄太, 橋本顕一郎, 大塚匠, 渡辺孝夫, 郷地順, 上床美也, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] レーザー励起光電子顕微鏡による(Ba,Na)Fe2As2のネマティックドメインの観察2021
Author(s)
影山遥一, 大西朝登, 石田浩介, Cedric Bareille, 水上雄太, 谷内敏之, 橋本顕一郎, 石田茂之, 永崎洋, 辛埴, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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[Presentation] 鉄系超伝導体Ba1-xRbxFe2As2の圧力下電子相図2021
Author(s)
岡田昂, 向笠清隆, 石田浩祐, 辻井優哉, 松浦康平, 水上雄太, 橋本顕一郎, 石田茂之, 伊豫彰, 永崎洋, 郷地順, 上床美也, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会
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