2021 Fiscal Year Annual Research Report
Control of photocatalytic activity by designing the carrier flow using a lateral potential gradient and visualization of photocatalytic characteristics by correlation analysis
Project/Area Number |
21H01805
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
小澤 健一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (00282822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20435598)
間瀬 一彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (40241244)
相浦 義弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (80356328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光触媒 / キャリアフロー / 顕微測定 / 軟X線分光 / 可視化 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
光吸収によって発生する遍歴状態の電子と正孔(キャリア)が化学反応を誘起する光触媒では,キャリアの生成とフロー(拡散・ドリフト)を制御することで活性化の増強/低減が可能となる。活性向上では,光触媒表面とバルクの間のポテンシャルの違い(バンドベンディング)を利用して,光励起エキシトンの分離を促進してキャリア密度を高める手法がしばしば採られる。本研究では,表面水平方向にバンドベンディングを導入してエキシトン分離とフリーキャリア密度の向上を図り光触媒活性の向上につなげることを目指す。その上で,マイクロメートルの空間分解能を持つ顕微光電子分光測定により,ポテンシャル,原子組成,吸着活性,光触媒活性等の二次元物性分布図を作成し,相関解析により高活性光触媒をデザインする因子を明らかにする。 令和3年度は,アナターゼ型二酸化チタン単結晶のへき開面,およびルチル型とアナターゼ型の二つの結晶相が混在した二酸化チタン単結晶表面の顕微光電子分光測定を行った。へき開面の測定では,Ti2p内殻準位,および価電子準位の光電子分光スペクトルの構造とエネルギー位置からドメインの区別ができ,エネルギー準位の場所依存性からへき開面のポテンシャル分布図を得ることに成功した。 ルチル/アナターゼ相が混在した系では,顕微X線吸収分光スペクトルのTi L吸収端の形状を利用してルチル相とアナターゼ相の分布を描き出し,相境界近傍のポテンシャル勾配を可視化した。さらに,ルチル相,アナターゼ相,相境界の3か所での光触媒活性を評価して,ポテンシャル勾配と活性の関係を議論した。 顕微光電子分光装置に関しては,高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設にある共同利用装置の高度化により実現しつつある。令和3年度は,顕微測定プログラムの整備と顕微装置の評価をまとめた論文(オープンアクセス)の執筆,出版を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,二酸化チタン単結晶のへき開面とルチル/アナターゼ混相表面の顕微分光測定を実施した。後者については相分布,元素分布,ポテンシャル分布,分子吸着活性分布の4種類の物性マップを取得し,さらに光触媒活性の評価をルチル相,アナターゼ相,相境界の三か所で行った。この成果に対しては複数の学会で発表をしており,また令和4年夏までには論文発表をする予定である。 へき開面ではポテンシャル分布が得られたが,ドメインサイズがビームスポット(15×80マイクロメートル)より大きいものが少ないため,ルチル/アナターゼ混相表面のような議論ができるデータの取得には,更なる実験が必要であることが分かった。一方で,へき開してできる多様な表面を顕微光電子分光で一挙に測定できることから,ルチル/アナターゼ混相表面に比べて光触媒活性を決め得る因子をより正確に評価できる道筋がたてられた。 顕微光電子分光測定では,数百本のスペクトルデータから一枚の物性マップを作る。この作業を測定直後に行い,その場で物性マップを得ることができるような簡易解析プログラムを開発して運用を開始した。これにより,データを取得しながら次の測定計画を立てるような迅速な測定が可能になった。 以上のように,令和3年度で達成した成果は,本研究が初年度に計画していたものをほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,光触媒表面への原子ドーピングによるポテンシャル勾配を導入して,その表面での光触媒活性を評価する予定である。ドープ原子にアルカリ金属を採用し,真空中での蒸着により表面にアルカリ金属原子を吸着させ,加熱により表面から内部にドープさせることで試料を調製する。蒸着の際にマスクをすることで,ドープ領域と非ドープ領域が同一光触媒表面に共存するようにする。アルカリ金属は電子供与体として機能し,光触媒の価電子バンドを結合エネルギーの大きい方向へシフトさせるため,ドープ/非ドープ領域でポテンシャル勾配が形成される。そこで,様々な大きさのポテンシャル勾配ができる蒸着条件を,アルカリ金属の吸着密度と加熱温度をパラメータとして決定する。本測定では,光触媒活性に対するポテンシャル勾配の影響を系統的に調べるものとして計画している。 令和4年度は顕微光電子分光装置の改良も予定している。現行の測定装置は顕微分光装置用に作られたものではないため,使用の際に様々な制約がある。この制約を取り除くためには,超高真空槽を新調することが手っ取り早く,本年度でこれを計画している。
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Research Products
(6 results)