2021 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on all-solid-state batteries: Clarifying the origin of interfacial resistance using advanced electrical potential measurement
Project/Area Number |
21H01818
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
石田 暢之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (10451444)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全固体リチウムイオン電池 / ケルビンプローブフォース顕微鏡 / 局所インピーダンス計測 / 空間電荷層 |
Outline of Annual Research Achievements |
全固体リチウムイオン電池はカーボンニュートラルの切り札となる有望な次世代蓄電池技術である。しかし、界面や粒界で生じる高いイオン伝導抵抗が実用化の大きな妨げとなっている。この界面抵抗を低減するためには、「界面抵抗の起源解明」および「それを可能とする界面抵抗の精密計測技術」が、試行錯誤的プロセス開発を脱却する上で本質的に重要である。本研究では、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)技術を基盤としたナノスケール電位計測技術を発展させ、「界面抵抗の起源と考えられている空間電荷層の精密計測」や、「単一粒界抵抗計測を実現する局所インピーダンス計測手法の開発」に取り組む。 2021年度は新しい局所インピーダンス計測法の開発を中心に取り組んだ。まず、モデル試料を用いた原理検証実験を行い、想定した通りに局所インピーダンスの測定が可能であることを実証した。加えて以下4つの取り組みを実施した。(1) 試料セットアップ方法や各種計測パラメータの最適化、(2) 測定可能な周波数帯域の検証、(3) 広範囲の周波数応答を効率的に計測するための測定自動化プログラムの作製、(4) データ解析のためのプログム作成や解析法の確立(位相補正法の開発など)。これらの活動を通じて、高い空間分解能かつ汎用的に局所インピーダンスを計測するための新しい手法のプロトタイプの開発に成功した。 今後はさらなる改良を行い本測定手法の確立を目指すとともに、応用展開に取り組む。局所インピーダンスを計測することで、マクロなインピーダンス計測で得られる各種インピーダンス成分の空間的位置やその長さのスケールを評価することができる。そのため、例えば界面・粒界抵抗の長さのスケールや空間電荷層容量の精密計測への応用が期待できる。これらの活動を通じて、提案手法の有効性を示すとともに、固体イオニクス学理構築に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、以下2の課題の実施を計画していた。(1) 電極-固体電解質界面に形成される空間電荷層における電位緩和距離の評価、および、(2) 新しい局所インピーダンス計測手法の開発。(1)については、試料作製・測定系の構築を行い、電位の緩和距離の測定に一部成功したが、改善すべき課題が残っており追実験が必要である。一方、(2)については当初の予定以上に計画を進めることができたため、次年度以降応用展開へ進むことができる。そのためおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施した「電極-固体電解質界面に形成される空間電荷層の評価」において、電極-固体電解質界面に存在する段差によって電極領域と固体電解質領域の電位信号が干渉し、空間分解能が低下してしまうことが分かった。この課題を解決するために、次年度、段差のない電極-固体電解質界面の作製に取り組み、電極-固体電解質界面における電位の緩和距離の精密計測を試みる。 加えて、2021年度に開発した局所インピーダンス計測手法の改良に取り組む。具体的には、(1) さらなる計測の自動化、(2) 周波数帯域の向上、(3) 理論計算と実験結果の比較を推進する。その後、実材料の評価へ展開する。具体的には「固体電解質結晶粒界におけるイオン抵抗の空間分布」や「電極-固体電解質界面における空乏層容量変化」の精密計測に取り組む。これまでの計測手法では解析が困難であったこれらの物性評価を行うことで、提案手法の有効性を実証する。
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