2021 Fiscal Year Annual Research Report
Developments of measuring nanomechanical dynamics of a fragile cell surface by scanning ion conductance microscopy
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21H01821
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
渡邉 信嗣 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (70455864)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオン伝導顕微鏡 / 生細胞イメージング / ナノピペット / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が創発する力学挙動を計測により可視化し、シングルセルやサブシングルセルのレベルで、こういった力学挙動と細胞機能との関わりを調べる取り組みが近年積極的に行われるようになった。しかし既存の技術では、僅かな力で損傷する脆弱な細胞の力学特性を精密に計測することや、非常に弱い力に応答する細胞の力学特性を探ることは未だに困難である。そこで本研究は、従来計測が困難だった極めて弱い力に応答する細胞表層のナノスケールの力学特性を計測する技術を、走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)技術を基盤に開発することが目的である。本年度は、SICMを用いた細胞表層の弾性率計測手法を従来モデルから拡張し、従来計測限界よりも1桁以上小さい弾性率のスケールまで計測できる手法を提案した。この力学計測モデルを用いて、200 Pa以下程度の弾性率を有するマウスの腸の細胞より遺伝子的にがんの悪性度を系統的に制御した 8 種類の細胞の弾性率のナノスケールマッピングを行い、細胞ごとの系統的な弾性率の違いを定量的に示した。また、局所弾性率のみならず、同時計測できる細胞表層のナノ表面形状と、それら弾性率・形状の時間変化を解析することで、用意した8種類の細胞をより系統的に力学構造の違いのみから分類できる場合があることを示した。更に、SICMから得られるこのような生細胞表層の動的な力学的物性による分類と、遺伝子発現解析から得られる細胞状態の分類が、相関を示す場合があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つであった走査型イオン伝導顕微鏡を用いた柔らかい細胞の力学計測のモデルをある程度構築できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、遺伝子的にがんの悪性度を系統的に制御したマウスの腸のがん細胞を用いて、細胞表層のナノメカニクスを計測する技術の開発を推進した。走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)を用いた細胞表層の力学計測モデルを従来から拡張し、極めて小さい弾性率をSICMで計測するための枠組みの一例を示すことができた。このモデルに基づいて前述のがん細胞の力学構造の解析を進めたところ、解析した系の細胞の遺伝子発現レベルと局所的な細胞表層の力学時空間構造にある程度の系統的な相関を見出せることがわかった。この結果は2次元培養した細胞の単層系で計測した結果であるが、2022年度は、生体中でより自然な形状である細胞同士を積層した3次元的な組織様の試料でどのような力学構造が生じているか調べる予定である。
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Research Products
(11 results)