2022 Fiscal Year Annual Research Report
固体の相転移を活用した高効率熱ー電気エネルギー変換機構の解明
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21H01822
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
柴田 恭幸 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (30758264)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 三次電池 / エネルギーハーベスティング / プルシャンブルー類似体 / 紫外-可視吸収スペクトル / イオン拡散イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
1.三次電池は環境の温度変化で蓄発電するデバイスであり、この電池の性能指標は、熱起電力(Vcell)と放電容量(Qcell)である。Vcell は、正極(α+)と負極(α-)の酸化還元電位の温度係数の差で決定される。他方、放電曲線の幾何学より、放電容量はQcell = -Vcell/[β+/r+β-/(1-r)]で表すことができる。ここで、β+(β-)と r は正極(負極)の酸化還元電位の容量微分と正極活物質の重量比である。本研究では、これら関係を実験的に確かめるため、rの異なった三次電池を系統的に作成し、そのVcellとQcellの相関を評価した。その結果、VcellとQcellのr依存性は上記の計算式で再現可能であることを明らかとした。本成果は原著論文として報告した。
2.コバルトプルシャンブルー類似体(Co-PBA) 薄膜の色は 物質中のNa+濃度に強く依存していることが知られている。本研究ではこの特性を利用して Na+濃度の分布の時間発展を調べた。まず、Co-PBA 薄膜に Na+濃度の分布が異なる境界層を作り、時間経過に伴うCo-PBA薄膜の透過像を観察した。その結果、初期段階では明瞭な Na+濃度の境界が観測されるのに対し、1時間後では境界がボケ始めていることが観測された。また、画像解析によりNa+濃度の一次元分布を評価し、一次元拡散方程式で定量的な解析を行うことで、マクロな拡散係数を求めた。本成果は原著論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は相転移を示すCo-PBA粉末試料合成を実施する予定をしていたが、2021年度までの調査から予測される条件の範囲で粉末試料を合成できないことが明らかとなり計画通り進まない点もあった。しかし、新たに相転移を示すプルシャンブルー類似体の組成を発見し、その合成に成功した。本試料の物性評価は2023年度に実施していく予定でいる。 他方、三次電池のデバイス性能指標を最適化させる方法を実験的に明らかにすることがでた。また、三次電池の放電レート特性に関する知見を得ることができ、現在原著論文化を進めている。さらに、当初予定はしていなかったが、Co-PBA薄膜内のNa+イオン濃度のマクロな拡散に関して知見を得るとともに、Co-PBA薄膜内におけるイオン拡散のイメージングに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2022年度中に原著論文に求められていないものを原著論文としてまとめ報告する。 次に、新たに作成に成功した相転移を示すPBAの評価を行い、三次電池電極への応用が可能かどうか見極める。また、相転移を示さないPBAの酸化還元電位の温度係数はPBA中のNa+の配置エントロピーを考えることでその大きさを理解することができる。そこで、新たな研究として、この特徴を活用してより大きな温度係数を示す物質探索についても実施する。
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Research Products
(5 results)