2021 Fiscal Year Annual Research Report
インチサイズダイヤモンド単結晶ウェハ上の結晶成長メカニズムの解明
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21H01832
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 英明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (90443233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大曲 新矢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40712211)
嶋岡 毅紘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (80650241)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 熱フィラメントCVD / 不純物ドープ / 熱流体シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
インチサイズの単結晶ダイヤモンドウェハ上に、高い歩留まりで高性能な電子デバイスを作製する上で、一様性の高いドーパント濃度分布を制御して実現することが極めて重要である。従来のマイクロ波プラズマCVDでは、そもそも使用するマイクロ波の波長で限定されるため、実質的には1インチ程度以下に成膜面積が限られることが多い。一方熱フィラメントCVDでは、成膜面積の拡大が容易であり、高濃度ドープにおいても煤が発生しにくいといった、マイクロ波プラズマCVDでの課題が大きく緩和されることが判っている。 上記事情から、本件では熱フィラメントCVDを用いた導電性ダイヤモンド単結晶成長に注目しているが、従来、基板サイズが小さかったこともあり、基板面内方向の一様性に加え、鉛直方向の一様性や、大面積ウェハとして候補の一つとなるモザイク単結晶性に対する一様性への影響などは殆ど不明であった。そこで、ドーピング濃度に関して、これらの一様性を確認するため、フィラメント間隔よりも大きな、1インチ程度のサイズを持ったモザイク単結晶ウェハに対して、フィラメント-基板成長表面距離を変化した成膜試験を実施し、結晶性の評価を行った。これにより、上記した非一様性に寄与し得る因子とその影響の大きさの評価を試みた。 一方、気相の様相を特定すべく、実機形状に対して熱流体シミュレーションを実行できる様に数値モデルを構築し、気相のガス流れ、温度分布を3次元空間上で求めた。マイクロ波プラズマCVDにおけるこれらの物理量の分布との比較とも併せ、上記した熱フィラメントCVDを用いた非一様性を引き起こす要因について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィラメントと基板間の距離をミリ単位で変化して成膜試験を実施し、SIMS測定によりボロン濃度の変化を確認した。フィラメントと基板間の距離が狭まる程、ボロン濃度が上昇した。例外として、最もフィラメントと基板間の距離が短い場合(5mm)には、フィラメント直下でのボロン濃度は、それ以外の領域での値と比して50%程度まで低下した。一方、いずれの場合もモザイク基板の接合部の影響は殆ど無いことが確認できた。 この、最もフィラメントと基板間の距離が短い場合(5mm)における、フィラメント直下での成長面プロファイルを確認すると、フィラメントが配置されていた領域に沿って凹部が形成されていることが判った。一方、この場合における、フィラメントの基材であるタングステンの濃度は、フィラメント直下でそれ以外の領域よりも数倍程度高いことが判った。これらの結果は、Wの過剰な取り込みはボロンの取り込みの抑制に相関があることを示唆している。過去の研究では、結晶成長速度とボロン濃度とが正の相関を持つことが示されていることから、Wの過剰な取り込みが結晶成長を阻害、結晶成長速度を押し下げることにより、ボロンの取り込みを抑制していると考えることができる。以上の結果はウェハ面積のインチサイズ化に伴い、より精緻な配置の制御が必要であることも示している。 3次元空間でのシミュレーションでは、フィラメント周りの温度勾配が確認できたが、マイクロ波プラズマCVDにおける非一様性に比べて小さく、今回得られたボロン濃度やタングステン濃度の非一様性に強く影響することを示す結果は得られなかった。一方、フィラメント温度の上昇により、実質的にフィラメントと基板との距離が縮小することと同等の影響が起こりうることが判った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き条件を変化して成膜実験を実施し、導電性における影響を調べる。その結果を踏まえて、装置構造の変化に対して、どういった影響が表れるかを検討する。数値計算結果では、ガスの流れを比較的自由に変化できることが判ってきた。より効率よく低抵抗性の膜形成を実現することができるかを検討する。 一方、装置内部の状況を診断する手法も検討する。特に、基板温度測定にも取り組み、成膜結果や数値計算結果、並びにこれらの相関をより精緻に理解する上での足が掛かりとする。
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