2021 Fiscal Year Annual Research Report
Spectroscopic study on dynamical structures of electrode/electrolyte interfaces using surface-enhanced electronic and vibrational Raman scattering
Project/Area Number |
21H01882
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
池田 勝佳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50321899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本林 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60609600)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動的構造 / テラヘルツ振動 / 電気二重層 / 電気化学界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
電極/電解質の接する電気化学界面に形成される電気二重層は、電池等においてエネルギー変換の行われる「反応場」である。電気二重層の微視的構造は、界面電子移動に大きな影響を与えるが、イオン間あるいは電極表面との物理化学的相互作用により、その動的挙動は複雑である。本研究では、「電極側の界面電子情報」、「電解質側の界面化学種情報」、「帯電粒子間の相互作用を伴う二重層の動的構造」を全て同時にin-situ測定することで、界面の構造とダイナミクスを明らかにすることを目指している。特に、イオン間の相互作用や電極との相互作用に伴う短距離秩序形成が電極反応に与える影響を調べ、次世代電池開発に資する界面現象の知見蓄積を目指している。 本研究では、水溶液系の溶媒和型希薄電解質とイオン液体電解質の比較を行うことを計画しており、まず界面電気二重層の理論的取り扱いが容易な溶媒和型希薄電解質を中心に測定を行った。電極側の界面電子情報測定については、ゼロ電荷電位を境に電子ラマン強度が変化する様子が捉えられ、その感度は従来の可視反射測定に比べて100倍も高感度であった。電解質側の界面構造情報測定については、電解質イオンの吸脱着の様子に加えて、これまで測定が出来なかった低エネルギー領域におけるスペクトルの電位依存性を測定した。イオン種・pHの違いや同位体効果について検討した結果、低エネルギー領域のスペクトルには界面水の集団運動が捉えられていることを確認した。また、イオン液体電解質についても、専用の電気化学分光測定セルの構築や使用予定のイオン液体自体の低エネルギー領域のスペクトル計測など準備を進めた。また、希薄電解質とイオン液体電解質の間を埋める実験系として、濃厚電解液についても界面その場振動分光計測を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、表面増強ラマン計測法における2つのブレークスルーを使って、①電極-電解質界面の両側の情報を同時取得する新しい試みと②テラヘルツ帯に相当する低エネルギー振動領域の界面選択測定を試みた。特に、水溶液系の溶媒和型希薄電解質と金電極の界面を主な測定対象として実験を行った。まず、前者については、電解質側の振動スペクトルを計測しながら、同時に電極側の表面帯電状態の測定に成功し、様々な電解質においてゼロ電荷電位を境に帯電状態が変化する様子や表面吸着種の影響を受ける様子を確認した。従来の可視反射測定(電解質側の振動情報は得られない)より100倍の高感度であることを実証し、その機構も理論的に解明した。後者については、低エネルギー振動領域に存在する水の集団運動に関わるモードが検出され、電位によって変化している様子を捉えることに成功した。界面選択的に水の集団運動を計測できる手法はこれまで存在しなかったこともあり、電極反応場で水がどのように振る舞っているのかを知る上で画期的な成果といえる。 また、希薄電解質との対比で濃厚電解質やイオン液体についても界面その場計測の準備を進めた。 以上のように、研究計画に従って予想以上に順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
テラヘルツ帯の相当する低エネルギー振動領域において、電極界面近傍の界面水の動的挙動を測定することに成功したが、そのスペクトル解釈には多数の水分子の多体運動に加えて、帯電界面との相互作用も考慮した複雑なシミュレーションの実施が不可欠である。そこで今年度から理論計算の専門家を共同研究者として加え、スペクトル解釈を進めていくこととした。 一方、実験系では希薄電解質溶液系での同位体効果の検証について、D2Oに加えて酸素側の同位体についても実験を行い、シミュレーションによるスペクトル解釈との整合性を確認する。また、電極側の界面電子状態計測に関して、水素発生領域に着目した実験も行う予定である。これに加えて、イオン液体や濃厚電解質系への展開も進め、希薄電解質溶液系との違いを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(13 results)