2022 Fiscal Year Annual Research Report
Observation of conduction band structure of organic semiconductor and study of electron-phonon coupling
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21H01902
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 弘幸 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (00283664)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 電子-フォノン相互作用 / ポーラロン / 電子移動度 / 伝導帯 / エネルギーバンド構造 / 角度分解低エネルギー逆光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体の機能は、電子と正孔の伝導により発現する。有機半導体では、電子移動度が正孔移動度に比べて極端に低いことから、電子伝導機構の解明と改善が求められている。しかし、電子の伝導機構は未解明である。本研究では、代表者が開発してきた角度分解低エネルギー逆光電子分光法 (AR-LEIPS) による伝導帯バンド構造の実測により電子伝導機構を明らかにする。特に、有機半導体の電荷(正孔と電子) の伝導機構に大きく影響する電子-フォノン相互作用を解明する。 AR-LEIPS測定するには、電子線のビームサイズ(2-3 mm)の範囲で配向のそろった結晶性試料が必要である。さらに、電子線照射による試料帯電を防ぐため、厚さが10 nm以下であることが望ましい。このような条件を満たす試料は、金属単結晶上にエピタキシャル成長した有機半導体膜が最も代表的である。2022年度は、ペンタセンをCu(110)面にエピタキシャル成長させた。試料損傷なく表面構造を解析できるMCP-LEEDを導入し、製膜条件を検討することで、結晶性が高く、結晶子が面内配向したエピタキシャル成長膜を得た。これについて、AR-LEIPSによる伝導帯バンド構造測定を試みている。 一方、実測したバンド構造から電子-フォノン相互作用についての情報を得るには、より高いエネルギー分解能でのAR-LEIPS測定が望ましい。現在のAR-LEIPS装置の分解能は、電子線のエネルギー幅で制限されていることから、電子線を単色化することで高分解化が可能である。このようなことから、ドイツのユーリッヒ研究所との共同研究で、エネルギー幅の狭い電子源の開発を進めてきた。その結果、0.8 マイクロアンペアでエネルギー幅が78 meVと十分な性能が得られた。この場合、予測されるAR-LEIPSの分解能は0.1 eV以上とこれまでの2倍以上となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペンタセンのARLEIPS測定については、まず薄膜構造を解析するためMCP-LEEDを導入した。Cu(110)面にペンタセンのエピタキシャル成長を試みた。多層膜を調製し、加熱することで単層膜を得る。この上にペンタセンを蒸着することで、10 nm程度の膜厚のエピタキシャル成長膜を作製した。MCP-LEEDで明確なスポットが得られるように、蒸着条件や加熱条件を検討した。 このようにして作製した膜について、AR-LEIPS測定を進めた。AR-LEIPSでは、角度を10点変えて、LUMO由来のピークを測定した。一つのスペクトルの測定に4時間以上かかり、全体では40時間以上となる。このようなことから、測定前と測定後で、LEETスペクトルを観測し、変化が十分に小さいことを確認した。電子-フォノン相互作用は温度による影響を受けるため、温度依存は有力なデータである。そこで、同じ測定を低温でも試みた。液体窒素で冷却すると、試料帯電が激しくなり信頼できる測定が困難となった。そこで、ドライアイスとアルコールによる冷媒を用いて-50℃に冷却し測定した。また+50℃でも測定した。 電子線を単色化した高分解電子源については、ドイツのユーリッヒ研究所にて、条件の最適化を進めた。電流が増えると、空間電荷によりエネルギー幅が広がるため、電流と分解能は背反する。最終的に0.8 マイクロアンペアでエネルギー幅が78 meVがえられた。AR-LEIPSの測定に十分な電流であり、AR-LEIPSの分解能を0.1 eV以上に改善することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ペンタセンの測定を完了させて伝導帯のバンド構造を得る。得られたバンド構造を理論解析を進めていく。 電子銃の開発については、ドイツで開発した装置を千葉に移送し、2021年度予算により作製した磁気シールド真空槽を活用して、高分解能電子源を完成させる。そののち、AR-LEIPS装置に導入し、調整を行う。これにより、高分解能での伝導帯測定を実現する。 この他、C60などのペンタセン以外の物質の製膜、AR-LEIPS測定を検討していく。
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[Journal Article] Ion-modulated radical doping of spiro-OMeTAD for more efficient and stable perovskite solar cells2022
Author(s)
ZhangTiankai,Wang F.,Kim H.-B.,,Choi I.-W.,Wang C.,Cho E.,Konefal R.,Puttisong Y,Terado K.,Kobera L.,Chen M.,Yang M.,Bai S.,Yang B.,Suo J.,Yang S.-C.,Liu X.,Fu F.,Yoshida Hiroyuki,Chen W.M.,Brus J.,Coropceanu V.,Hagfeldt A.,Bredas J.-L.,Fahlman Mats,Kim D.S.、Hu Z.,Gao Feng
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Journal Title
Science
Volume: 377
Pages: 495~501
DOI
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