2021 Fiscal Year Annual Research Report
包接分子を変数とする配位高分子の特異な物性の創出と機構解明
Project/Area Number |
21H01905
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 多孔性金属錯体 / 配位高分子 / 包接体 / 磁性 / 発光特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、細孔内に内包した分子の挙動を明らかにし、内包分子の運動および相変化を利用して骨格の物性を制御する機構を確立することで、新しい分子包接体の物性科学の開拓を目的とする。今年度は、Hofmann 型多孔性金属錯体 {Fe(pz)[Pt(CN)4]} (1) を基軸化合物として、1 に包接した分子の運動や状態変化と骨格構造の磁性および発光特性との動的連動の達成を目指して、主に以下の (1)-(3) を推進した。 (1) 包接分子の挙動と磁気特性の相関の解明:これまでに、1 のプロパン分子包接体が「降温過程における多段階の磁化率の変化」と「昇温過程における非平衡なスピン状態」を示す事を見出したが、その機構は未解明である。本年度は、プロパンよりも構造自由度を下げたプロピレン包接体を作成し、磁気挙動を比較した。吸着測定では、最大吸着量はプロパンとプロピレンはほぼ同じだが、吸着速度はプロピレンの方が速かった。磁気挙動は、プロパン包接体と全く異なっており、降温過程では一段階、昇温過程で二段階のスピン転移を示し、昇温過程では220K付近の二段階目の変化では、磁化率の減少と再増加が観測された。 (2) NOの細孔内挙動の解明及び磁気特性との相関:1 を用いてNO 雰囲気下の XRPD、IRスペクトルおよび磁化率の in situ 測定から、1 の Fe(II) の酸化還元を伴う可逆的な NO 吸脱着、細孔内でのNOの二量化およびスピン状態変化を見出した。 (3) 分子包接体内の包接分子の挙動と発光特性の相関:発光性配位高分子Cd(terpy)[Re(N)(CN)4]において、アンモニア雰囲気下in situ X線回折-発光スペクトル同時測定により、アンモニアの段階的吸脱着とそれに伴う可逆的な結晶-アモルファス相変化および発光波長変化を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目は、ほぼ予定通りに進展している。一部コロナの影響で学外での測定が滞ったものがあるが、全体的には想定以上の結果がでているので、「おおむね順調」とした。 (1)では、プロピレン包接体においてプロパン包接体と異なるユニークな磁気挙動を見出すことができた。これは想定通りの進捗である。今後は、細孔内でのプロピレン分子の挙動と磁気挙動をプロパン分子と詳細に比較検討しその機構を解明していく。 (2)では、酸化還元を伴う可逆的な NO 吸脱着とスピン状態変化を見出した事は、大きな進捗である。学外での in situ IRスペクトル測定が予定通り進められなかったものの、細孔内でのNOの二量化を確認できたことから、包接NO分子の酸化還元および二量化とスピン状態変化の相関機構が示唆され、今後大きな進捗が見込まれる。 (3)では、発光性多孔性配位高分子の開発に成功し、アンモニアの多段階吸着に伴う、特異な結晶-アモルファス相変化と発光特性変化を見出した。これは想定以上の進捗であり、今後は in situ 測定による、アモルファス相変化直前の構造の決定とアンモニアの圧力に依存した構造変化と発光変化の追跡により、この変化機構を解明する。 以上の結果は、本課題の核心である「内包分子の運動および相変化を利用した骨格の物性制御の機構の確立」に迫る成果につながることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を基盤として、以下の3項目を引き続き推進し、分子包接体内の束縛分子の状態変化を物理的変数として捉え、細孔内の包接分子の密度および相互作用を制御することで、包接分子の自由度を規定し、分子の運動および相変化と骨格物性が相関する包接体ならではの物性科学を展開する。 (1) 包接分子の挙動と磁気特性の相関の解明:プロピレンの細孔内挙動をガス雰囲気下 IR および Raman スペクトルの in situ 同時測定、および固体NMRにより追跡し、プロピレンの運動と分子包接体の磁気特性との相関を詳細に調べる。さらに、充填するプロパン分子の密度を制御して、密度と状態変化および磁気特性変化の相関を検討する。また、エタンとエチレン包接体についても同様の実験を行い、系統的にこれらの相関を比較検討する。 (2) NO 吸着に伴う Fe(II) の酸化による骨格構造内のFe(III)ならびに残留Fe(II)のスピン状態をNO 雰囲気下 in situ K-edge EXAFS測定により明らかにする。また、NO の濃度を制御して、NO二量体形成および磁気挙動との相関を調べる。 (3) 分子包接体内の包接分子の挙動と発光特性の相関:アンモニア分子の吸着に伴う動的な構造と発光挙動の変化をガス雰囲気下 in situ X線回折-発光スペクトル同時測定により評価する。また、アモルファス相変化直前の構造の決定とアンモニアの圧力に依存した構造変化と発光変化の追跡により、この変化機構を解明する。吸着と時間分解発光スペクトル測定の同期による吸着量(細孔内の分子密度)と発光特性の相関、ならびに温度依存測定によるゲスト分子の集合状態と発光特性の相関も検討する。 また、これらと並行して、新規化合物の合成も進める。
|
Research Products
(39 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Flexibility Control of Two-Dimensional Coordination Polymers by Crystal Morphology: Water Adsorption and Thermal Expansion2021
Author(s)
Ryo Ohtani, Haruka Yoshino, Junichi Yanagisawa, Hiroyoshi Ohtsu, Daisuke Hashizume, Yuh Hijikata, Jenny Pirillo, Masaaki Sadakiyo, Kenichi Kato, Yuta Shudo, Shinya Hayami, Benjamin Le Ouay, Masaaki Ohba
-
Journal Title
Chem. Eur. J.
Volume: 27
Pages: 18135-18140
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-