2022 Fiscal Year Annual Research Report
隣接軌道が相乗的に作用する高周期14族元素二重結合化合物の創製と結合活性化
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21H01913
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 東北大学, 理学研究科, 教授 (70302081)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 14族元素 / 高周期元素 / 多重結合 / 結合活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲルマニウム上がアルキル基で置換されたゲルマニウム-酸素二重結合化合物(ジアルキルゲルマノン)のTHF錯体がリンイリドと反応し、ゲルマニウム-炭素二重結合化合物(ゲルメン)とホスフィンオキシドを与えることを見出した。これはWittig反応のゲルマニウム版に相当する反応(germa-Wittig反応)として初めての例である。同様な反応は対応するジアルキルシラノン(ケイ素-酸素二重結合化合物)でも進行することを見出した(sila-Wittig反応)が、ゲルマノンの場合と異なり、反応で生成するホスフィンオキシドが未反応のシラノンに対して強く配位してしまうために、sila-Wittig反応は完結しなかった。リンイリドに対するジアルキルシラノンとジアルキルゲルマノンの反応性の違いは、ケイ素-酸素、ゲルマニウム-酸素、リン-酸素間の二重結合エネルギーの違いを反映したものと推定した。この結合エネルギーの違いは、ジアルキルゲルマノンのTHF錯体とトリフェニルホスフィンとの反応でジアルキルゲルマノンのゲルマニウム上の酸素がトリフェニルホスフィンに移動してジアルキルゲルミレン(二価ゲルマニウム化合物)とトリフェニルホスフィンオキシドを与えるのに対し、ジアルキルシラノンはトリフェニルホスフィンと反応しないことからも確かめられた。また、ジアルキルシラノンがLewis酸共存下での芳香族化合物のシリル化をすることを見出した。 前年度合成した嵩高いアルキル基を持つジアルキルボラシレンが小分子である水素や二酸化炭素と常温常圧で反応して、それぞれ1,2-水素付加体および環化付加体を与えることを明らかにした。また、ジアルキルボラシレンがアミド類と反応し二分子のアミドが脱酸素カップリングした生成物を与えること見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた化合物の合成および反応性の調査が順調に進んでおり、隣接軌道が関与する結合活性化についても様々な知見が集まりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
純粋なケイ素-酸素二重結合を持つケトンのケイ素類縁体(シラノン)と様々な基質との反応性を引き続き検討する。特に、今年度見出したLewis酸共存下での芳香族化合物のシリル化反応の詳細を明らかにし、14族元素-酸素二重結合の反応性や結合活性化能に及ぼす14族元素の効果の系統的理解を進める。 不飽和ケイ素上に嵩高いアルキル基を持つケイ素-ホウ素二重結合化合物(ジアルキルボラシレン)の反応性の検討中に見出した、アミド類の脱酸素カップリング反応の詳細と、その反応機構を計算化学的に明らかにする。 さらにジアルキルボラシレンのホウ素を高周期13元素であるアルミニウムに置換したジアルキルアルマシレン(ケイ素-アルミニウム二重結合化合物)を合成し、その分子構造と電子状態を明らかにする。この化合物にはこれまでに例のない中性のケイ素-アルミニウム二重結合をもち、活性の高い高周期元素間π結合に加えてLewis酸性の極めて高いアルミニウムの空の3p軌道があるため、これらの二種類の隣接軌道の相乗的作用により、小分子に対してより高い活性が期待される。 得られた成果は論文にしてまとめて国際化学誌に投稿して公開するとともに、国内外での学会で発表する予定である。
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