2022 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素-ケイ素π単結合の結合長変化を利用したπ結合の構造、性質の解明
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21H01914
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久新 荘一郎 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40195392)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合 / シス付加 / ジアニオン / ラジカルアニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマンと末端アルキンの反応を検討した。この反応では、ゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合が開裂してアルキニル基と水素原子が付加する。生成物の構造をX線結晶構造解析で決定したところ、シス付加体であることがわかった。理論計算によると、シス付加体よりトランス付加体の方が安定であるため、エネルギーの高いシス付加体が優先的に生成したことになる。この反応と後処理を1H NMRで追跡したところ、反応直後、生成物の単離後、X線結晶構造解析のための再結晶後のスペクトルは同一で、異性化はしていないことがわかった。そのため、この反応では反応中にシス付加をすることが明らかになった。この反応はアルキンの末端炭素原子がゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合の一方のゲルマニウム原子に付加し、末端水素原子がもう一方のゲルマニウム原子に引き抜かれる機構で進行すると考えられる。 ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマンを2.2等量のカリウムで還元すると、ジアニオンが生成し、18-クラウン-6を加えると結晶が得られた。X線結晶構造解析の結果、ゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合が開裂し、2個のゲルマニウム原子がアニオンになっていることがわかった。それに伴い、これらのゲルマニウム原子はピラミッド構造になっている。 ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマンを1等量のカリウムを用いてトルエン中で還元すると、ラジカルアニオンが生成する。この反応をTHF中で行い、18-クラウン-6を加えて結晶化させると、ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマンの橋頭位のtert-ブチル基が脱離したものが二量化し、ジアニオンになった化合物が得られた。ラジカルアニオンやこの二量体ジアニオンの構造については、さらに検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、得られた結果には当初の予想とは異なる結果が含まれている。ビシクロ[1.1.0]テトラシランと末端アルキンの反応では、トランス付加が起こるという結果が得られており、今回の結果はケイ素-ケイ素π単結合とゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合では反応様式が異なることになる。これについては、さらに検討を行い、理由を明らかにする必要がある。また、カリウムによる還元で二量体のジアニオンが得られたのは驚くべき結果であり、どのような過程でこの化合物が生成したのか明らかにする必要がある。また、この二量体ジアニオンを二電子酸化すると、二つのゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合が共役した化合物が得られると予想される。二つのπ単結合の共役はこれまで報告されておらず、新しい分野の研究が開けることになる。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上で述べたように、ゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合への末端アルキンの付加がシス付加で進行する理由を、ケイ素-ケイ素π単結合の結果と対比させながら明らかにする。また、ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマンの還元では、二量体ジアニオンの構造解析を完成する。また、二電子酸化によって、2個のゲルマニウム-ゲルマニウムπ単結合が共役した化合物を合成し、その構造や性質を明らかにする。 さらに、2個のケイ素原子と2個のゲルマニウム原子から成るビシクロ[1.1.0]ブタン類を合成し、π単結合長を含む構造パラメータ、物性、反応性を明らかにし、π単結合長の変化による物性や反応性の違いを明らかにする。
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[Book] 触媒総合辞典2023
Author(s)
菅野研一郎,久新荘一郎
Total Pages
548
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-25274-3