2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H01919
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久木 一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90419466)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素結合 / 多孔質構造体 / 構造転移 / 単結晶 / 外部刺激応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子から構成される多孔質構造体は、分子に応じて構造体内部の空孔の形、大きさ、および化学的・電子的性質を自在に設計、構築でき得る。本研究では、所望の機能をプログラムした有機分子を水素結合で自発的に集積させ、外部刺激によって可逆的にその構造と物性 (機能) をスイッチできる「水素結合性ダイナミック空間機能材料」の創出を目的とする。 まず、水素結合部位としてカルボキシ基を有する、一連のヘキサアザトリフェニレン誘導体およびベンゾチアジアゾール誘導体を用いて、溶媒分子を除去後も明確な空孔を維持する安定な水素結合性多孔質フレームワーク (HOF)の構築を検討した。その結果、これらはそれぞれのパイ共役部位間の強固な積層によって、永続多孔性を有する安定なHOFを与えることが明らかになった。 また、分子両端に計4つのカルボキシフェニル基を有するヘテロアセン誘導体 (CP-PPおよびBr-PQ) を合成し、これらを用いてHOFを構築した。その結果、これらの分子からなるHOFは、いずれも空孔内部の溶媒分子の脱離とともに、分子間水素結合の組み換えが起こり、内部空孔が縮小することがわかった。特にBr-PQ HOFは、部分的な単結晶性を維持したままこの構造転移が進行するため、構造転移前後の結晶を用いてX線構造解析を行うことにより、その転移機構を初めて提案した。 また、高い構造柔軟性を有するジベンゾ[18]クラウン-6-エーテルにカルボキシフェニル基を導入した誘導体を用いてHOFの結晶を作成した。HOFの構造解析の結果、結晶内に1次元状の水分子のチャネルが形成していることがわかった。相対湿度85%下でプロトン伝導性を評価したところ、伝導性は特筆するほど大きくはないものの、その活性化エネルギーは0.14 eVと顕著に小さく、Grotthuss機構によるプロトン伝導であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、まず活性化後も明確な内部空孔を有する剛直な水素結合性有機多孔質フレームワーク(HOF)を構築し、次いで活性化の際に水素結合の組み換えを伴うにもかかわらず高い結晶性を保ったまま構造転移するHOFの構築も達成した。この過程で、分子構造、HOFの構造、およびHOFの構造柔軟性の相関関係が徐々に見えつつある。また、外部刺激に敏感に応答する構成分子の合成と、それを用いた動的HOFの作成についても進めつつあり、本研究課題は計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に、外部刺激(光、電場、酸などの化学刺激など)に敏感に応答する構成分子の合成を加速させ、それを用いた動的HOFの作成および構造の解析を行う。構造を同定したHOFについては、外部刺激を印加し、構造と物性の動的な挙動をオンタイムで観察・解析する。
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Research Products
(27 results)