2021 Fiscal Year Annual Research Report
トリアゾリウムアミデートの機能追究による高難度位置選択的分子変換
Project/Area Number |
21H01930
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大松 亨介 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 特任准教授 (00508997)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 双性イオン / 1,2,3-トリアゾール / 水素原子移動 / 光レドックス触媒 / C-H結合変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
双性イオン型トリアゾリウムアミデートの機能を多角的に追究すべく、研究を推進した。本研究計画の端緒であったN-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートを用いた末端選択的C-Hアルキル化反応については、位置選択性が触媒構造に応答せず、選択性を向上させることが困難であることを示す結果を得た。そのため、より構造多様性に富むN-アシル型触媒を活用した触媒開発を行なった。 また、トリアゾリウムアミデートの共役酸であるアミドトリアゾリウムが、一電子還元を起点として分子状水素を放出し、自身はトリアゾリウムアミデートとして再生するというユニークな特質を発見し、適切な光レドックス触媒と協働させることで、アクセプターレス脱水素型クロスカップリング反応を実現した。本法は、種々の炭化水素化合物とオレフィンとのC-H/C-Hクロスカップリングを効率的に進行させる。酸化剤や水素発生触媒、電極等を必要とせず、水素ガスの副生を伴いながら生成物が生じる。トリアゾリウムアミデートとイリジウム光レドックス触媒のみで触媒反応が成立するが、2,4,6-コリジンのようなピリジン類縁体を添加することで、反応効率が向上することを見い出している。水素発生のための遷移金属錯体や電極を介さずにプロトンを分子状水素として放出する触媒システムは新奇であり、今後、反応機構の解明や水素発生効率をさらに向上させる触媒分子の開発を行うことで、様々な脱水素型反応の開拓に展開できることが見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C-H切断の位置制御に関しては、当初有望視していたN-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートによる目標達成が困難であることが判明したものの、N-アシル型トリアゾリウムアミデートの構造設計・開発が着実に進行している。また、共役酸のアミドトリアゾリウムの一電子還元を起点として、触媒再生と水素発生が可能という当初予想していなかった発見をもとに、アクセプターレス脱水素型クロスカップリング反応という合成化学的に高難度な反応を実現したことが、研究の新しい方向性を切り拓く契機となった。触媒的に切断したC-H結合の水素原子を水素ガスとして放出する水素原子移動ー脱水素触媒システムの適用性は広く、様々な未踏の分子変換の実現につなげられると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
嵩高い置換基を有するN-アシル型トリアゾリウムアミデートの開発を継続し、位置選択的C-Hアルキル化反応の実現を目指す。N-ピバロイル基のような嵩高い置換基を導入すると、C-H結合を切断する水素原子移動(HAT)が進行しづらくなることがこれまでの研究で判明しているが、励起光レドックス触媒とアミデートからHAT活性なアミジルラジカルが生じる一電子移動が可逆であることがHAT過程の効率が不十分である要因になっていることも明らかにしている。そこで、適切な光レドックス触媒の探索等によりHAT過程の活性種であるアミジルラジカルの濃度を上昇させることで、嵩高い置換基導入による反応効率の低下を改善する。 並行して、アクセプターレス脱水素型クロスカップリング反応の開拓を推し進める。水素発生過程の効率向上がカップリング反応の触媒回転数の向上につながると想定されることから、その実現に資する分子を探索する。また、炭化水素化合物と様々なカップリングパートナーとの反応を試み、触媒システムの適用性を検証する。
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