2022 Fiscal Year Annual Research Report
トリアゾリウムアミデートの機能追究による高難度位置選択的分子変換
Project/Area Number |
21H01930
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大松 亨介 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 特任准教授 (00508997)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 双性イオン / 水素原子移動 / 光触媒 / C-H結合変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
双性イオン型トリアゾリウムアミデートの機能を多角的に追究すべく、研究を推進した。まず、トリアゾリウムアミデートによるC-H結合変換における位置選択性や官能基許容性を追究する目的で、求核置換反応に対して高い反応性をもつベンジルフルオリド類縁体を基質としたC-H結合変換反応を開発した。 また、前年度までの研究によってN-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートを用いた末端選択的C-Hアルキル化反応については、位置選択性が触媒構造に応答せず、選択性を向上させることが困難であることを示す結果を得た。そのため、より構造多様性に富むN-アシル型触媒を活用した触媒開発を行なった。具体的には、チオアミドの共役塩基であるチオアミデートの触媒機能を引き出すことに成功した。適切なイリジウム光レドックス触媒とチオアミデートを併用することで、シクロヘキサンをはじめとする各種炭化水素化合物のC-Hアルキル化反応が円滑に進行することを見出した。分光学的手法を用いた機構解析の結果、C-H結合切断は、プロトン共役電子移動によって進行していることが示唆された。チオアミデートの構造が反応の位置選択性に影響を与える可能性も調査したが、構造変化によって選択性が変化する結果を得るには至らなかった。 一方、光レドックス触媒の併用を必要とする従来のアミデート触媒設計戦略から抜本的な方針転換を行うことが重要であると考え、1分子で水素原子移動(HAT)触媒機能を発揮し得る新しい触媒の設計を行なった。その一つとして、アクリジニウムイオンにアミデートを直結させた双性イオン型アクリジニウムアミデートを合成し、そのHAT触媒機能を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C-H切断の位置制御に関しては、当初有望視していたN-ホスフィニルトリアゾリウムアミデートによる目標達成が困難であることが判明したものの、N-アシル型トリアゾリウムアミデートによる反応開発が着実に進展した。また、前年度発見した共役酸のアミドトリアゾリウムの一電子還元を起点として、触媒再生と水素発生が可能という当初予想していなかった発見をもとに、アクセプターレス脱水素型クロスカップリング反応という合成化学的に高難度な反応を実現したことが、研究の新しい方向性を切り拓く契機となった。触媒的に切断したC-H結合の水素原子を水素ガスとして放出する水素原子移動ー脱水素触媒システムの適用性は広く、様々な未踏の分子変換の実現につなげられる。 さらに、1分子でHAT触媒機能を発揮し得るアクリジニウムアミデートの開発が、今後の反応開発にブレイクスルーをもたらすと期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
嵩高い置換基を有するN-アシル型トリアゾリウムアミデートの開発を継続し、位置選択的C-Hアルキル化反応の実現を目指す。N-ピバロイル基のような嵩高い置換基を導入すると、C-H結合を切断する水素原子移動(HAT)が進行しづらくなることがこれまでの研究で判明しているが、励起光レドックス触媒とアミデートからHAT活性なアミジルラジカルが生じる一電子移動が可逆であることがHAT過程の効率が不十分である要因になっていることも明らかにしている。1分子で効率的にHAT活性種を生成させ得るアクリジニウムアミデートの機能追究を中心に研究を展開する。
|