2022 Fiscal Year Annual Research Report
新たな設計思想に基づく不斉フェロセニルホスフィン配位子の合成と均一系触媒への応用
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21H01940
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小笠原 正道 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70301231)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フェロセン / ホスフィン / 均一系触媒 / 遷移金属錯体 / 不斉合成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)面不斉ビニルフェロセンの不斉メタセシス二量化反応の開発と新規不斉ホスフィン誘導体の合成と応用 前年度までの研究において、「面不斉ビニルフェロセンの不斉メタセシス二量化/速度論分割により、面不斉ビスフェロセン類を99%eeを超える光学純度で得ること」に成功している。本年度はこの手法を拡張して、Cs対称ジビニルフェロセン類の不斉非対称化により、同様に面不斉フェロセン二量体を99%eeを超える非常に高いエナンチオ選択性で得ることに成功した。この手法により得られた面不斉ブロモビニルフェロセン二量体は、常法によりホスフィンへと誘導化できた。ここで得られた面不斉二座フェロセニルホスフィンは、遷移金属にトランスキレート配位し、特異な不斉環境を構築する。パラジウム触媒不斉アリル位置換反応の不斉配位子として応用したところ、非常に高いエナンチオ選択性を示すことが見出された。 (2)面不斉DPPF誘導体の合成と不斉反応への応用 トリアリール二座ホスフィンであるDPPF の適切な位置に「Cp-Fe-Cp軸の回転を阻害する置換基を導入し、『アトロプ異性類似の面不斉』を誘起することによる新たな不斉配位子の設計/合成/応用」を検討している。ここで分子設計した「アトロプ異性類似面不斉DPPF誘導体」では「Cp-Fe-Cp軸周りのひねり」に関してある程度の自由度があるため、キレート配位する中心金属の種類や酸化状態に応じて「最適なbite angleに自動調整」され、反応中間体の構造に対応して適切な不斉環境を構築することが期待できる。ジフェニルホスフィノ基に対してベータ位にtBu基、あるいは架橋置換基を導入したDPPF誘導体をラセミ体として合成し、DBTAを利用して2つのエナンチオマーに分割することができた。今後は、ここで得られた新規不斉ホスフィン類の応用について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による繰越があったが、繰越後の期間を含めると当初予定した計画を遂行することができた。また、設計/合成した不斉ホスフィン配位子が、予想通りの高い性能を示すことも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)面不斉ビニルフェロセンの不斉メタセシス二量化により得られた新規不斉二座フェロセニルホスフィン誘導体の応用 前年度までの研究で新たに合成した面不斉二座フェロセニルホスインは、遷移金属にトランスキレート配位する特異な配位様式を示す。このトランスキレート二座フェロセニルホスフィン配位子を数グラム以上の大スケールで合成し、様々な遷移金属触媒不斉反応へ応用し新規不斉反応の開発を検討する。 (2)面不斉DPPF誘導体の合成と不斉反応への応用 前年までに合成した面不斉DPPF誘導体について、様々な機器分析手法により同定、物性の測定をおこなう。また、主にX線結晶構造解析を用いてその配位様式、三次元構造に関する検討を行う。その後、これらの新規不斉ホスフィン類の均一系遷移金属不斉触媒反応への応用について検討する。また、そこから得られた結果をフィードバックし、さらなる高性能化(高活性、高エナンチオ選択性)を目指し、置換基導入などによる不斉配位子のファインチューニングを行う。
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Research Products
(13 results)