2021 Fiscal Year Annual Research Report
剛直な骨格をもつ大環状多核錯体を活用した高選択性・高活性反応の開拓
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21H01946
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 貴志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90734103)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大環状分子 / 多核錯体 / 反応場 / 配位捕捉 / 選択性 / ホストゲスト化学 / 分子認識 / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、剛直な骨格をもつ大環状多核錯体を活用した高選択性・高活性反応を開拓することを目的としている。研究代表者らは以前に、NNO3座キレート配位部位papの環状6量体であるhexapap配位子の合成と、そのパラジウム6核錯体が4-tert-ブチルピリジンを結合することでねじれたC2対称の構造をとることを報告している。2021年度は、反応場としての構造と性質の解明のため、hexapapのパラジウム錯体による内孔配位子の捕捉能とそれに伴うコンフォメーション変化について更なる詳細な検討を行った。大環状配位子としては側鎖に嵩高いtert-オクチル基を導入し、積層を防いで複数の大環状分子が関与する望まない反応が起こらないようにした。内孔にアセトニトリルが配位したパラジウム6核錯体に対してトリフェニルホスフィンを6モル当量加えたところ、これが6分子内孔に配位した錯体の形成を支持する1H NMRスペクトルが得られた。6量体錯体は各パラジウムpapユニットが交互に上下に配向したS6対称の構造をとることが示唆された。次に、末端に配位性基をもつα,ω-二置換ペンタンの配位検討を行った。1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンを3モル当量加えて生成した錯体の31P NMRスペクトルでは、パラジウムに配位したリンのシグナルが2本観測された。また、1,5-ジアミノペンタンを3モル当量加えて生成した錯体の1H NMRスペクトルでは、パラジウムpap由来の各シグナルは等強度で2本に分裂して観測された。これらの結果から、hexapapのパラジウム6核錯体1分子につきα,ω-二置換ペンタンが隣接したPdを連結する様式で3分子配位した、C3対称の構造をもつ錯体の生成が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度では、反応場としての機能開拓を目指している大環状パラジウム6核錯体について、配位性基をもつ分子の内孔への捕捉能とそれに伴うコンフォメーション変化について詳細を明らかにすることができた。これは、大環状多核錯体を活用した高選択性・高活性反応を開拓することを目的とする本研究における重要な成果である。このパラジウムの配位サイトに反応基質の配位性基を捕捉した複合体を形成し、基質の反応点と大環状多核錯体の金属中心との相対配置を制御することができれば、高選択性・高活性反応を実現できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた成果をもとに、2022年度の研究で、hexapapのパラジウム錯体を用いた高選択性・高活性反応を開拓する。それと同時に、触媒活性を有する他の遷移金属元素とhexapap配位子の錯形成検討とその多核錯体の精製・構造解析検討を進める。また、研究代表者らはhexapap配位子の他にも、大環状配位子bpytrisalenとその多核錯体を開発してきた。この分子は、salen錯体部位が高い平面性を有し、環全体が剛直でユニット同士が回転しない特徴をもつ。2022年度の研究では、salen部位およびbpy部位に種々の金属 (マンガン、鉄、パラジウムなど) を選択的に導入した3核錯体/異種6核錯体の合成法を確立する。各金属上の配位サイトにおける結合様式や多核錯体の酸化還元特性を検討し、反応場としての構造・物性を最適化するとともに、多核錯体を用いた高選択性・高活性反応を開拓する。
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Research Products
(6 results)