2021 Fiscal Year Annual Research Report
Electrochemical imaging that contributes to cell lineage determination
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21H01957
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
珠玖 仁 東北大学, 工学研究科, 教授 (10361164)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞系譜 / 電気化学 / 走査型プローブ顕微鏡 / 遺伝子発現 / 細胞分化 / 間葉系幹細胞 / 上皮間葉転換 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ヒト間葉系幹細胞hMSCを骨細胞への分化誘導する培養条件で、細胞形状や分子マーカー(アルカリホスファターゼ)活性を評価した。走査型イオンコンダクタンス顕微鏡SICMでは、高さの分布(ヒストグラム)や細胞の形態により分化状態を評価した。その結果、未分化維持培地中で線維芽細胞様の形状を維持した一方、骨芽細胞分化培地では細胞が肥大・平坦化し、形状に差が生じることが確認できた。細胞の高さについても、未分化維持、骨芽細胞分化培地それぞれ培養した場合に差が生じることが確認できた。 2)上皮間葉転換EMT進行の新たな評価手法としてSICM計測による生細胞表面形状を適用した。ヒト肺上皮細胞A549に成長因子TGF-βを添加した群のイメージングでは、ラッフルの減少が確認でき、12 h以降でラッフル構造が消失し滑らかな細胞表面が観測された。これらの変化は間葉系細胞の形状の特徴であり、EMTの進行を示唆する。同じ測定時間において細胞表面の形状の不均一性が見られ、細胞ごとにEMTの進行度合いに差があることが示された。 3)上下2つの流路と、2流路間の多孔質膜からなるマイクロ流体デバイスを作製した。この多孔質膜上で血管内皮細胞HUVECを単層培養し,細胞を介する物質透過性を電気化学的に評価する。上層の流路は開放系となっており、上部から走査型電気化学顕微鏡SECMの探針電極を挿入した。細胞-細胞間ギャップを透過してくるフェリシアン化イオンの還元電流を追跡し、デバイス内で培養した血管内皮細胞HUVECの膜透過性を評価できた。同様にSICMの探針ピペット電極を挿入して細胞形状の観察に成功した。さらに、多点電極アレイデバイスにより単層細胞系および細胞塊における膜透過性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
間葉系幹細胞の分化および上皮間葉転換の培養条件を安定に制御した状態で走査型プローブ顕微鏡および細胞機能評価法を検討できた。プローブ顕微鏡システムの性能・仕様も高度化することに成功した。研究計画に従い、ヒト間葉系幹細胞hMSCに加えて、増殖速度活性の高い細胞集団(REC, 高純度ヒト間葉系幹細胞)についても骨芽細胞分化の培養条件を確立した。上皮間葉転換EMT過程をSICMで評価するにあたり、ラッフルなど形状変化・出現割合を客観的・定量的に解析するプロセスを確立できた。多層構造のマイクロ流体デバイスの上部に穴を空けプローブ顕微鏡を導入できるようにした状態において、密閉系流路と同様に層流を発生させ血管内皮細胞にせん断応力を与えることが可能である事をシミュレーションおよび顕微鏡観察で確認できた。プローブ顕微鏡を用いた細胞のキャラクタリゼーションと並び、多点電極アレイデバイスの開発および細胞系への応用も進んでいる。総じて研究計画に沿った進捗状況にあると判断でき、研究成果も順調に挙がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト間葉系幹細胞hMSCの、骨および軟骨への分化誘導の培養条件を検討する。hMSC以外の幹細胞の分化誘導も検討する予定である。形状変化、酵素活性変化に加え遺伝子発現解析のデータ取得にむけ準備中である。 上皮間葉転換EMT の系では、長時間リアルタイム追跡が課題となっている。今年度に引き続き上皮細胞株A549を用い、、SICMにより、細胞‐胞間接着や細胞表面の微絨毛の形態変化に着目しながらリアルタイム解析をおこなう。A549および他の細胞種も用いて表面構造の変化に着目し、微絨毛やラッフルの生成・消滅過程における阻害剤の影響などを評価する。同様の手法を癌細胞株の微絨毛構造の不均一性のキャラクタリゼーションに適用する。 血管内皮細胞に加え、周皮細胞や繊維芽細胞、神経様細胞、がん細胞などが共存する培養系において、SICMに基づく形状情報と遺伝子発現など機能情報を照合して細胞種の違いを判別可能かどうか検討する。画像情報から特徴的な構造物(微絨毛など)の境界長さや占有面積を数値化する解析法を検討する。 プローブ顕微鏡を用いた細胞のキャラクタリゼーションと並び、多点電極アレイデバイスの開発および細胞系への応用を推進する。新規電気化学イメージングデバイスとして電流増幅LSI集積化電極アレイデバイスやclosed bipolar電極アレイ型デバイスにより酸素消費や酵素活性、膜透過性などの機能情報を取得し、細胞ごとのSICMの画像の位置・形状情報との対応を解析する。
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Research Products
(21 results)